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イカ墨-がん予防効果に関節炎の改善も
【健康に効く食べ物】
墨を吹く生物といえばイカとタコ。しかし、その墨が食用となるのはイカだけで、タコのそれは食用にならない…そんな豆知識をテレビで得たことがある。(2004.12.02掲載)
そのイカ墨といえば、イカ墨パスタがあるが、日本で初めて紹介されるとき、イタリアのベネチア(ベニス)の料理という触れ込みだったとか。これも豆知識である。
とはいっても、パスタばかりがイカ墨料理ではない。わが国にも、沖縄県には「イカ墨汁」、富山県には「塩辛の墨作り」という伝統食品があるのです。ただ、パスタに比べて知名度はグッと低くなるが。
さらにいえば、気のきいたデパートやスーパーの食品売場を見渡せば、ラーメン、パン、カレー、リゾット、中華まん、餃子、さきイカ、かまぼこ、焼きそば、ポテトチップ、煎餅、果てはアイスクリームまで、イカ墨を使った加工食品を発見できる。
魚介類が大好きな日本人は潜在的にイカ墨好きであり、それにパスタが火を付けたという推測ができるが、実はもうひとつ火付け役がいたのです。
1990年のこと。青森の弘前大学医学部が、青森県産業技術開発センター(以下センター)との共同研究で発見した、イカ墨が持つ“がん予防”効果。これをさまざまな学会に発表し、それをマスコミが取り上げたことから、イカ墨の健康的効果に注目が集まった。それが、さまざまなイカ墨加工食品の誕生へとつながったというわけだ。
ではなぜ、弘前大とセンターがこのような発見に至ったか。青森の八戸漁港は日本最大のイカ揚げ漁港であり、したがって加工するイカの量も半端じゃない。しかし、食品として使用できるイカの部分といえば、胴体の肉、ゲソとよばれる足がほとんどで、せいぜい“トンビ”と呼ばれるイカの口が珍味になる程度。
その他はすべて廃棄処分。それを有効活用できないかと考えたセンターが注目したのがイカ墨だった。調べてみると、沖縄のイカ墨汁は、体が弱っているときに食べると元気が出るという話があるし、中国では漢方薬の原料として用いられているという。
そこで、成分分析を行ったところ、「ムコ多糖(コンドロイチン硫酸)」という成分に行き着いた。みなさん聞いたことがありますか? 関節炎を改善する効果が高いということで健康食品となっている成分である。
ムコ多糖の働きとは、酵素や核酸、脂質、ビタミン、ホルモンなどの生理活性物質や細胞が“働きやすい”環境を提供するという重要なもの。
骨を作ったり関節が滑らかな動きをするのを助ける、傷ついた皮膚を治りやすくする、ウイルスなどの感染を防ぐ、血液をきれいにする、新陳代謝を良くする、などだ。
また、弘前大が行ったマウス実験では、マウスの腹腔から取り出した免疫細胞の一種であるマクロファージに、イカ墨のムコ多糖とアミノ酸の集合体である「ペプチド」の“複合体”を投与したものを、マウスの体に戻して、4日ほど後にマウスを検査してみると、がん細胞やウイルスを“食べる”能力が8倍ほどに向上していることがわかったという。
その能力は、がんの治療薬であるインターフェロンに匹敵するといわれていた。14年前の話だから現在はわからないが。
ちなみに、加工食品に使用されているイカ墨は、アフリカ沖で捕られたモンゴウイカのいわば輸入品がほとんど。日本で一般的なスルメイカでは量が少なすぎるから、とか。
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●筆者・旭利彦
1958年、神奈川県生まれ。旅行会社、スーパーマーケット業界紙、海外旅行専門誌などを経てフリー。99年から02年まで週刊新潮で「よろず“医者いらず”」を連載。著書に「よろず医者いらず」(新潮社)など。健康・医学分野で執筆中。HP(http://asahi-t.com)でも健筆を振るう。
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