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「患者の身に立って考える」腹腔鏡手術の名医

【名医・名薬はコレだ】
meii20060327_01.jpg 「何しろ根っからの心配性で、家に帰ってからも患者さんのことが気になって、考え事をしていることが多いんです。あまり健康的じゃないですね」と加納宣康医師は笑う。
 今では腹腔鏡手術の世界的権威だが、実は子どものころは病弱だった。プロ野球や陸上競技の選手にあこがれながらも、自身は病院通いの連続。入院したことも何度かある。そんなある日、通院先の病院での 悲(ひ) 愴(そう)な気持ちの中で「そうだ、自分が医者になるという手もあるな」と気がつき、医学の道に進むことになった。(2006.03.27紙面掲載)

 幼稚園のときに発症した脳性髄膜炎を皮切りに、副鼻腔炎やそれに伴う頭痛に悩まされ続けた少年時代。受けた手術は10回以上。高校の入学式の翌日には虫垂炎で手術を受けるなど、患者としての“キャリア”は申し分ない。
meii20060327_02.jpg その経験は、医師になっても無意識のうちに「患者の身に立って考える」という癖、言い換えれば「心配性」という性格として体に染み込んでいる。それが冒頭のような発言として表に出てくるのだ。
 だから、患者にとって最もダメージの少ない術式として腹腔鏡手術に興味を持つのは、自然な流れだった。
 「1991年に帝京大学の山川達郎教授が日本で初めての腹腔鏡手術をするのを見て、『これからはこの術式が外科手術の主流になる』と確信しました」
 予測は見事に的中し、腹腔鏡手術は今では胆石手術だけでなく、胃、大腸、胆のうなどのがんの手術でも導入が進み、外科手術におけるシェアを高めつつある。加納医師も山川教授の指南を受けて実績を積み、第一人者として現在の病院に招かれることになる。
 ところが意外なことに、加納医師の手術実績を見ると腹腔鏡による手術の割合が少ないことに気付く。開腹手術が約7割なのに対して3割を占めるに過ぎない。
 「腹腔鏡は確かに患者の受けるダメージは小さいけれど、おのずと限界もある。無理をして腹腔鏡で手術をすることでリスクを高めてしまったのでは意味がない。手術は患者さんのためにするものであって、医師が症例数を稼ぐために行うものではありません」
 評判を聞きつけてやってきた患者に対しても、リスクが高いと判断すれば、丁寧に説明して開腹手術を勧める。誰よりも腹腔鏡を熟知する医師の判断だけあり、患者は素直に納得するという。
 「逆に腹腔鏡に不安がある人にも『開腹手術も腹腔鏡も、おなかの中でやることは同じです。不安を抱えたまま手術するくらいなら開腹したほうがいいですよ』と話すと不思議に不安が解消するようですね」
 加納医師が腹腔鏡を使う手術は決して難易度が高いものではない。加納医師の経験と技術をもってすれば、さらに高くハードルを設定してもおかしくはないのだが、目指すのは“冒険による達成感”ではなく、腹腔鏡手術の健全な普及。そこには外科医としてだけでなく、教育者としての意志が強く反映されている。
 「腹腔鏡手術は、外科医が正しい教育を受けてトレーニングを積みさえすれば、技術を身につけるのに苦労をすることはありません。今後道具の改良が進めば、さらに高度な手術も可能になるでしょう。そんな中で今私たちがすべきことは、この手術をルーチンで確実にできる技術を持っておくことなんです」
 日本中の民間病院が医師不足に悩む中、都心から離れた千葉・鴨川の病院に多くの優秀な若い外科医が加納医師の指導を求めて集まってくる現実に、外科医としてだけでなく教育者としての存在の大きさが表れている。
 しかし当の本人は「小さい町だから、どこに行っても患者さんに声をかけられるので恥ずかしいんですよ」と照れ笑いする。小さな町で世界的権威が活躍するという日本では珍しい光景が、安房鴨川では日常化しているのである。
(医療ジャーナリスト・長田昭二)
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かのう・のぶやすbook20060327_04.jpg 1976年岐阜大学卒業。同大医学部附属病院などで勤務してから、86年羽島市民病院外科部長、岐阜大非常勤講師。その後、松波総合病院外科統括部長、帝京大講師、マハトマ・ガンジー・メモリアル医科大(インド)名誉客員教授、帝京大助教授などを経て、96年亀田総合病院主任外科部長兼内視鏡下手術センター長。2003年から現職。著書に「いい患者さん、困った患者さん」(新潮社)など。医学博士。
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病院情報
meii20060327_03.jpg千葉県鴨川市東町929(JR外房線・内房線「安房鴨川」下車タクシー5分) 電話04・7092・2211。亀田総合病院は病床数862床で、外来部門を受け持つ亀田クリニック(19床)、回復機能訓練を行う亀田リハビリテーション病院(56床)などで組織される「亀田メディカルセンター」の中核機関として位置づけられる。ドクターヘリによる離島救急など高度な医療提供を展開し、国内有数の民間病院として知られる。

■次回(4月3日発行)は「肺炎球菌治療」の中田クリニック・中田紘一郎医師

投稿日: 2006年04月04日

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