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「患者本位」貫く緑内障のスペシャリスト

【名医・名薬はコレだ】
kenko20060424_01.jpg 目の衰えを「年のせい」とあきらめるのは簡単。しかし単なる視力低下ではなく、「緑内障」で「視野欠損」が生じると事態は深刻だ。眼球内の眼圧が高まるなどで視神経がダメージを受け、その結果視野の中に「見えない部分」が生じるのだが、放置して進行すると、最悪の場合失明もありうる。慈恵医大眼科の北原健二教授は、緑内障治療において日本を代表するスペシャリストだ。(2006.04.24紙面掲載)

 長野県伊那市の眼科医の家に生まれ、美術の世界へのあこがれはあったが、家業の手前、医学部に進んだ。
 「大学に残ることは好みではなかったのですが、苦痛でもない。気がついたら今の私がいた(笑)。故郷の診療所は弟が継いでいます」
 緑内障は程度の差こそあれ、40代で5―6パーセントが 罹(り) 患(かん)するといわれるが、視野欠損という自覚症状が出るまでには長い期間がかかるため、自分が緑内障であることに気付いていないケースが非常に多いという。
 そこで、進行の早い若年性や頭痛などの激烈な苦痛を伴う「閉塞 隅角(ぐうかく)緑内障」という特別なタイプのものを除き、緑内障の大半はゆっくり進行するため、様子を見ながら治療方針を固めていくのが一般的だ。
 治療法は点眼薬を用いた薬物治療と、外科的な手術の2種類が柱だが、新しい点眼薬の開発が進み、今やよほどのことがない限りいきなり手術することは少なく、薬物治療が第一選択となる。
 「新薬の開発によってこの数年で薬物療法の精度はグンと高まっています。生涯を通じて点眼薬だけで症状をコントロールでき、手術を受けなくて済む可能性もあります」
 とはいえこれは、第一人者だからこそ言えること。数ある薬から一番の薬を選ぶコツがなければ効果的な治療は望めない。同じ眼科医でも緑内障に詳しくない医師も多く、専門性の差はそのまま治療効果となって現れることになる。
 「目の手術」というと、患者は大きな恐怖を感じるのが普通だ。
 「目の手術は基本的に局所麻酔で行うので、術中も患者さんは意識がある。つまり“見ている”わけで、恐怖感は大きい。だから患者さんのことを思うと、手術は避けてあげたいんですよ」
 かといって決して手術に自信がないわけではない。それどころか、今も年間400件以上の手術を手がける。それなのに可能な限り投薬でアプローチする背景には、父の教えの存在が大きい。
 「『常に患者の側に立って考えろ』という教えだけはたたき込まれているんです。父の時代は医師の権威が今とは比較にならないほど大きかった。そんな時代に“患者本位”を唱えていたことに、敬意を表しますね」
 緑内障のように治療期間が長くなる疾患では、患者と医師とのコミュニケーションが重要となる。そこで北原教授が目指すのは、患者を脅して治療方針を維持するのではなく、逆に安心感を持たせて心を開かせること。
 当面は手術の必要がない患者に「薬でコントロールしましょう」と言っても、患者にしてみれば「目薬だけでは不安」と考えるもの。そこで日常生活で眼圧が高まらないような工夫をアドバイスするのだ。
 ネクタイをきつく結ばない、うなだれるような姿勢を続けない、長時間にわたって腹圧がかかるようなことをしない…。そして「バランスのとれた食生活や運動不足解消なども、実は病状進展を抑制する効果があります」と説明する。
 「こうした日常での取り組みを指導することで、病状のコントロールもさることながら、患者の精神的な不安も取り除くことができるんです」
 大学教授という肩書から想像する高圧的な雰囲気はみじんもなく、父親譲りの開業医のフレンドリーな雰囲気で接する姿勢に、多くの患者の支持が集まるのもうなずける。
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きたはら・けんじ
 1941年長野県生まれ。67年東京慈恵会医科大学卒業と同時に同附属病院で実地修練。70年同大眼科学教室助手。77年米ミシガン大学視覚研究所に留学。81年慈恵医大眼科学教室講師、84年助教授、90年から教授。現在は日本眼科学会監事、日本眼科医会副会長、日本神経眼科学会理事、日本眼光学学会常任理事、日本産業・労働・交通眼科学会理事長、日本視野研究会会長なども務める。医学博士。
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病院情報
kenko20060424_02.jpg 東京都港区西新橋3ノ25ノ8(都営地下鉄三田線・「御成門」から徒歩3分、JR「新橋」から徒歩10分) 電話03・3433・1111。1075床(うち眼科病床は45床)。4病院1診療所を持つ慈恵医大の中核病院。アジア初の脳血管内治療センターを開設するなど、国内有数の先進医療に取り組んでいる。常勤医29人、非常勤医15人の眼科が眼科領域を満遍なく網羅する専門医体制で診療に当たっている。年間手術件数は約2300件。レーザー手術は1000件に及ぶ。

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投稿日: 2006年05月09日

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