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「ウィニー=悪」じゃない―開発者・金子氏が反論
【パソコン/インターネット】
ウイルスに感染したファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」によって、パソコン内の情報がインターネット上に公開される事件が相次いでいる。そんななか、ウィニー開発者の金子勇氏(元東大大学院助手、著作権法違反 幇助(ほうじよ)の罪で裁判中)=写真左=が先日、東京・秋葉原で講演。「ウィニーが情報を流出しているのではない。流出した情報がウィニーで広まっているだけだ」との持論を展開し、「ウィニー=悪」という世論に真っ向から反論した。(2006.05.16紙面掲載)
■元凶はユーザー自身
金子氏は今月2日、秋葉原コンベンションホールで開催されたアスキー主催の「情報 漏洩(ろうえい)対策セミナー」に出席した。同セミナーでは、セキュリティー業界の著名人やセキュリティーソフト販売会社担当者らが最新の情報漏洩対策について講演したが、その中でひときわ異彩を放っていたのが金子氏の講演内容だ。
世間では「情報漏洩の元凶はウィニー」という考えが広まりつつある。これに対し、金子氏は「ユーザーが企業の機密情報などを私物パソコンにコピーした時点で、すでに情報は漏洩している」と主張。そのパソコンにインストールされているウィニーが「アンチニー」などの暴露ウイルスに感染することで“情報公開”の下地が準備され、最後にウィニーの起動によって漏洩済みの情報が広まるのだ、という。
たしかに、ウィニーによる流出事件はすべて金子氏の主張する3段階を経て起きている。これは明らかにユーザーの過失だ。
■バージョンアップできれば…
しかし、ウィニー自体にも暴露ウイルスに感染するという弱点がある。これについて金子氏は、「開発当時はウイルスの手口を予見できなかった。これは、すべてのソフトウエアについて言えることで、だからこそソフトウエアは更新(バージョンアップ)が必要だ。ウィニーも更新すれば、安全なソフトにすることが可能だが、自分は現在公判中のため、対応できない」と釈明した。
京都地裁で審理されている裁判では、金子氏が「ウィニーのバージョンアップを繰り返した」ことも争点のひとつとなっている。そのため、かりに金子氏がウイルスへの対応策などをウィニーに施すと、罪が重くなる可能性がある。また、第三者が同様の修正を行っても、「幇助の幇助」で同罪になる可能性がある。こうしたことから、弱点を抱えたままのウィニーが大手を振って出回るという皮肉な事態となっているのだ。
■金子氏の罪は?
現在のウィニーには3つの問題がある。「情報漏洩」と「通信量の増大」を助長していること、そして金子氏が逮捕された直接の容疑でもある「著作権法違反幇助」だ。
金子氏の後に講演したウィニー弁護団事務局長の壇俊光弁護士=同右上=は、「金子さんはウィニー公開当初から違法コピーをしないように呼びかけていた」という。これは見方によっては、「違法コピーに使われる可能性を予見しながら、あえて公開した」とも受け取れる。だが、壇弁護士は続けて、「ウィニーの開発、公開、利用、管理などには、解決されていない法的な問題が複雑に入り組んでおり、法整備が追いついていない。(インターネットにおける)ウィニーの技術価値をきちんと踏まえたうえでの、立法的な解決が望ましい」と主張した。
■政府とマスコミが拡大を後押し?
実際、他の講演者たちも、「ウィニーを封じれば漏洩が止まるというものではない」と口をそろえて発言していた。報道されている流出事件のうち、ウィニーによる流出はごくわずかであり、大半はパソコンや書類の置き忘れや盗難、ファクスの誤送信、不正持ち出しなどが原因だとの報告もあった。
なかでも興味深かったのは、アリエル・ネットワーク社の徳力基彦氏の調査結果。同氏は「検索サイトで利用されたキーワードを調べると、当初は英字の『Winny』という言葉が多かったが、安倍晋三官房長官が会見で『ウィニーを使わないように』と呼びかけて以降、カタカナの『ウィニー』というキーワードが激増した。『ウィニー+無料+ダウンロード』という組み合わせで、3月だけで13万回もの検索が行われている」と語った。
政府による安易な呼びかけやマスコミの取り上げ方が、ワルぶった人々に刺激を与え、かえってウィニーが広まった可能性がある。十分な対策を立てたうえで呼びかけをするべきだったかもしれない。小紙も、紙面ではカタカナで表記しているので、責任の一端がある。
■ウィニーだけが悪者ではない
現在、ウイルス対策ソフトメーカーやプロバイダーなどによってウィニー封じが進行中だが、それだけでは情報流出は止まらない。企業による情報管理・取り扱いのルール策定と、社員各自の意識改革が必要だ。
ともかく、現行のウィニーは危険がいっぱいだ。これ以上の情報漏洩を防ぐ意味からも、緊急避難や超法規的処置としてバージョンアップを認めるか、政府が修正ファイルなどを開発して配布するべきだろう。
その際には、著作権に関する警告表示機能も加えてほしい。「著作権法違反も情報流出も、ユーザーの心得によるところが大きい。ウィニーにすべての責任を押しつけるべきではない」―これが同セミナー全体を通した主張でもあった。
そのうえで、あえて言いたい。そもそも「ウィニーを使いたい」と思う時点で、その人はどうかしていると思うのだが、いかがだろうか?
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