この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
“人工エナメル質療法”で虫歯治療に革命
【サラリーマンを襲う病気】
虫歯は削って、詰めて治すもの、とばかり思っていた。しかし、それは正しくないという。実は最近、接着性レジンという合成樹脂を使う“人工エナメル質療法”が注目されているのだが、この治療法だと歯を削るのを最小限に抑えられるというのだ。(2006.05.23紙面掲載)
■虫歯は治らない
「虫歯を治せると考えていたのが間違いの元でした。手でも足でも人の体の傷が治るには、傷口の血液が固まって外からの刺激を遮断することが必要で、それによって傷ついた組織が再生するのですが、歯はそういう治り方をしないのです」
NPO法人「あなたの健康21『歯と口の健康を守ろう会』」の安田登理事長(歯学博士)が話す。
まずは歯の構造をみてみよう。歯は外側からエナメル質、象牙質、歯髄(しずい)の3つの層でできている。一番奥にある歯髄には血管や神経細胞があるが、エナメル質や象牙質には神経細胞はもちろん、血管もない。
血管がないということは、虫歯によってできた穴(う 窩(か))がふさがって治るということもないのだ。だから治療のために歯を削るほど逆に“傷口”が広がり、虫歯が再発しやすくなってしまう。
「この『虫歯は治らない』という点に気がつかなかったことが、これまでの歯科医学と歯科治療の最大の問題だと考えています」
■歯学のノーベル賞
虫歯は口の中の細菌が作る酸によって、外側のエナメル質から歯が溶けていく病気だ。歯を削り、詰め物をしても、歯と詰め物の間に酸が侵入し、虫歯が再発してしまう。そこでさらに大きく削って詰め物を…と繰り返すうちに歯がなくなり、やがて差し歯や入れ歯になってしまうことが多い。
この悪循環を断つために登場したのが、「接着性レジン」を使う「人工エナメル質療法」だ。
「もともとレジンは歯科用のアクリル樹脂の総称で、使い勝手がよく、詰め物や入れ歯の歯肉の部分などに幅広く使われてきました。ところがその後の研究で、歯などにしっかりと接着させることができ、しかもそれを使えば、虫歯を治癒に近い状態にすることができることがわかりました。そのために開発されたのが、接着性レジンです」
1982年に接着性レジンを開発したのが、安田氏の恩師でもある中林宣男・東京医科歯科大学名誉教授だ。中林名誉教授はこの研究で“歯学のノーベル賞”といわれる国際歯科学会賞(IADR)を94年に受賞した。
■酸にも強い
ではどういう治療をするのか。まず虫歯の部分を削った後に接着性レジンを入れて、その上に金属などをかぶせる。このとき接着性レジンがエナメル質のようになることも、中林名誉教授は突き止めている。
エナメル質は体内のカルシウムやリンなどから合成され、酸などの外敵から内側のより柔らかい象牙質などを守る。しかし、そのエナメル質が突破されてしまえば、後は削って詰め物をしても決定的な効果はない。
それに対して、虫歯で露出した象牙質の部分に接着性レジンを塗れば、どうか。
「樹脂が象牙質の中にしみ込み、その構成成分と絡み合って固い層を作る。これが人工エナメル質で、細菌が出す酸にも強く、虫歯になりにくくなります」
しかも、ふつう詰め物をする場合、しっかりと詰めるために歯を大きく削りがちだが、接着性レジンを使えば、歯を削るのは必要最小限でいい。
「この人工エナメル質によって虫歯の再発率は極めて低く、20年以上も再発しないという例が多くあります」
■普及には問題も
中林名誉教授が会長になってNPO法人が設立されたのは2年前。接着性レジンの普及が目的だ。
「しかし、技術が必要な割には診療報酬の点数が低いなどの問題がまだあります。接着性レジンを使うことが大がかりな治療でも有効な治療法だと認識している歯科医が少ないうえに、金属(インレー、クラウン)をかぶせるような治療の場合、保険診療の対象になっていないことなどから、普及には時間がかかりそうです」
虫歯対策には歯磨きなどの自己管理と歯科医による年2回程度の健診、そして虫歯治療で歯を失わないために、接着性レジンをきちんと使う施設での治療をお勧めする。
--------------------------
【接着性レジンを使っている歯科は】
「歯と口の健康を守ろう会」のサイト(http://www.t-oralhealth.org/)にアクセスすれば、「あなたの街の歯医者さん」コーナーで、何らかの形で接着性レジンを使っている歯科医院(310カ所)を都道府県別に探せる。うち安田理事長の研修を受けるなどした同会の会員は121カ所。会員には同会のマーク「t.o.h」がついている。
関連記事
トラックバック
行って来ました歯科医院へ。なんと12年ぶりです。 あの歯を削る恐怖に3ヶ月辛抱しましたが、もう限界でした。痛みがひどくなったのでとうとう意を決して歯科医院...
トラックバック時間: 2006年06月06日 13:45
