この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
昭和30年の香り漂う赤羽「岩淵水門」
【食とレジャー情報】
赤羽は東京城北の盛り場。ひなびた味わいがあって、街のそこここには昭和のにおいが残っている。東口には、古本屋のあるアーケード、小鳥屋や駄菓子屋、中華そば屋、おもちゃ屋など昔ながらの業種が勢ぞろいの商店街がある、OK横丁という魅力的な名前の飲み屋街があって、グランドキャバレー・ハリウッド赤羽店は、みのもんた氏の行きつけらしい。(2006.06.06紙面掲載)
赤羽一帯の東京北部は、明治以後にできた軍事施設や軍需産業が集中していた地域。すぐそばの十条には今も自衛隊の駐屯地があるし、大日本印刷、カルビーなどの各種産業の大工場が見られる。赤羽駅東口の名物、川魚料理の居酒屋「まるます屋」は、朝9時からの営業。工場勤務の労働者が夜勤明けにも一杯やれる体制だ。
この街でおすすめの散歩コースは、東口商店街のレトロな味わいを楽しみながら、駅からひたすら北上し荒川方面へと向かうルートだ。途中にあるのは、東京23区内唯一の造り酒屋、「丸真正宗」の小山酒造。辛口の江戸風の酒を造る蔵元である。
しばらく歩くとけっこうな高さの土手があって、そこを登ると予想だにしなかった雄大な水景が広がっている。岩淵水門だ。大正末期に荒川の水害を防ぐために造られた。荒川と荒川放水路、新河岸川がぶつかる東京の 分水嶺(ぶんすいれい)。荒川もここから下流は隅田川になる。川の対岸は埼玉県川口市。吉永小百合主演の映画『キューポラのある町』(昭和37年作品)はこの鋳物の街・川口が舞台だった。
岩淵水門にほど近い、川の真ん中には小さな島がある。そこに建っているのが草刈りの碑。碑には「農民魂は先づ草刈から」とある。碑文によると、昭和13年から6年間、全国から選ばれた草刈名人により全日本草刈選手権大会が開かれた。両岸に観衆あふれ、旗指物なびいて一世の壮観であったというから、相当な見ものだったはず。碑が建立されたのは、昭和32年、大日本草刈選手権理事長横尾堆肥居士による。「堆肥」という文字になつかしさを感じる。
毎度この河原に来て、都内ではなかなかな水景を見て、昭和30年代に盛大に行われていたという草刈りを思い浮かべる。和む風景だ。

