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“突き抜けた”久多良木氏が行き着く先は?
■大前研一の「IT時評」
テーマ1:ソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE)は、次世代ゲーム機「プレイステーション(PS)3」の欧州での発売を来年3月に延期すると発表した。親会社ソニーの部品製造に問題が生じたため、と説明している。
私は以前からPS3の11月発売は間に合わないのではないか、と書いていましたが、ヨーロッパだけを遅らせるという発表でしたね。SCEは、日米でのPS3発売は予定通り11月としていますが、発売数は当初予定の半分になっています。
そうした遅れよりも問題なのは、価格が今まで発表されていた6万2790円から4万9980円に再設定されたことです。価格政策の迷走ぶりが見て取れます。任天堂のWii(ウィー)は12月2日発売で2万5000円、マイクロソフトのXbox360でさえ3万9795円で、PS3発売直前の11月2日に2万9800円に値下げすると発表しています。
つまり、PS3はWiiやXbox360よりも2倍近い価格の商品だということです。しかも、本体だけで5キログラム、付属品も入れて 梱包(こんぽう)すると7キログラムになると言われています。重た過ぎますよね。
これを航空便で輸送する場合、わずか1000個で7トンにもなり、運送費や通関などで1個あたり1万円ぐらいかかります。もともとPS3はたぶん1個16万円ぐらいのコストがかかっていると私は想定しています。これを6万円で売ろうというのですから、売れば売るほど赤字が拡大します。かといって売れなければ、PSの地位は崩壊する。どちらに転んでもダメな商品です。
SCEの久多良木健社長=写真、AP=は記者会見で、ブルーレイ対応の青紫色半導体レーザーをソニーから十分に調達できなかったことが欧州販売延期の理由だとして親会社を批判しましたが、私はそんなものは枝葉末節のことで、設計そのものがおかしいと思います。
PS3に使われているマイクロプロセッサはスーパーコンピューターにも使われる高性能なもの(1CPU+6SCPUの並列処理)ですが、そんなものゲームにいらない、というのが私の考えです。いや、これを使いこなせる技術者はゲーム業界にはいないでしょう。
任天堂の岩田聡社長がゲーム路線をまっすぐ進んでいるのに対し、久多良木さんはハード先行で突き抜けてしまい、全然違う方向に向かって自爆しちゃったのではないかとさえ思います。
PS3が日の目を見ても、たぶん売れないでしょうし、売れたとしてもソフトが続かないうえに赤字が拡大するでしょう。SCEはこれで惨敗するのではないか、と私は危惧しますね。
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ビジネス・ブレークスルー(スカイパーフェクTV!757チャンネル)の番組「大前研一ライブ」9月10日放送分から抜粋。(2006.09.25紙面掲載)
