TOPビジネス > 税金無駄遣い? さいたま市が「5億円の盆栽」購入

税金無駄遣い? さいたま市が「5億円の盆栽」購入

 さいたま市が、旧大宮市にある「盆栽町」を町おこしの目玉にしようと、わが国有数の盆栽愛好家、高木禮二氏=明光商会名誉会長=の所有コレクションを5億円で購入しようする動きが発覚し、波紋を広げている。
「税金の無駄遣いだ!」「守るべき伝統文化がある」…。当の高木氏と、さいたま市に縁の深い評論家の小沢遼子氏が『盆栽5億円論争』を大展開した。

買う必要なく借りて展示を
(元浦和市議で社会評論家・小沢遼子)
――5億円は無駄遣いか
 「大宮は盆栽の伝統があるところで、今も外国人が多く訪れている。PRしたいだけなら、今もやっているようにホームページをつくって、興味がある人にメールを流したりすれば十分。まず“会館”は必要ない。会館は5億円じゃ済まない。盆栽は園芸業者の庭で手入れされたものを見るもの。別途展示してPRしたいなら、業者から交代で借り出して、県庁なり市役所ロビーに飾ればいい。盆栽を新たに買う必要ありません」
 「おそらく市側は、ハコ物を建てたいというのがまずありきではないか。さいたま市は合併したこともあって、多目的ホールなどは余っている。それで目新しいものを作りたいと、盆栽に目をつけたに違いない」

――市側は伝統文化の保存・育成を言うが
 「たとえば長唄も保存しなきゃならないだろうけど、全部、公費でやっているわけではない。文化庁なりで保存が必要なケースもあるだろうが、さいたま市が、その先駆けを目指しているとは思えない。今回の問題とは別に考えるべきだ」

――盆栽をどう思う
 「盆栽は美しいものです。いい形で残してほしい。決して消えてなくなっていいとは思わない。ただね、議員サンとかナントカ長の肩書が付いた男の人は皆、自宅玄関に盆栽を飾る(笑)。金持ちでないと維持できないこともさることながら、あれはステータス。関係者が盆栽をもっと広めたいと考えているなら、従来通りの位置付けでいいのか。それとも、女の人にも興味を持ってもらえるような新しい取り組み方に踏み出すのか。いずれにしても、官ではなく、業者自身が考え、努力する話だ」

――売り主に擬せられている高木氏は、貴重なコレクションの散逸防止を目的としている
 「気持ちは分かりますが、自分で世話しきれなくなったというなら、金と引き替えではないでしょう。寄付ですよ。ただ、一鉢1億円もするようなのもあるんでしょう。仮に無償で譲渡されても、専門家を置いて世話しなければならないなど、維持費が毎年かかる。税金を払う側はそこを問題にするんです」
---------------
【おざわ・りょうこ】
 昭和12年、東京生まれ。法政大卒業後、広告代理店、出版社勤務を経て、昭和40年代に“ベ平連”活動に従事し、浦和市議、埼玉県議も経験。テレビのコメンテーターとして活躍中。


国家予算で守ってもよい
(明光商会名誉会長・高木禮二)
――高木さんがさいたま市に売るという盆栽が論議を呼んでいる
 「少年のころから盆栽が好きで、18歳から集め始め、今、5000鉢ある。ご承知の通り、私は社員に対してスパルタ式の経営で会社を大きくした。それが6年前、九死に一生を得る大病を患った。実力者が大病をしたらどうなるか。私をなき者にしようとする勢力が台頭した。でも、病気で行動力がなくなり、夢と希望がなくなった。私は会社から追われたが、晩節は汚したくない」

――金の問題ではないということか
 「かつて韓国サムスン財閥の先代会長が『ほしい』というから『全部まとめて100億円だ』というやりとりになった。売るつもりがないから言った言葉だが、そのくらいつぎ込んでいる。こういうコレクションは1+1=2ではない。5にも10にもなる」
 「今回は自分の寿命も見えてきたから、手放すなら、いいとこ取りされる業者でなく、トータルで維持してもらえるしっかりしたところに売りたいと考えていた。さいたま市にカネがあるかどうか知らないが、私がそういう意向を持っていることを知り合いの盆栽業者に伝えていたら、こういうことになった」

――5億円なら寄付みたいなものか
 「そうです。ただ、サムスンには100億と言ったけど、見積もりをした業者には、日本の伝統文化なんだから、海外に流出しないなら『20億円は下らない』と伝えた。ところが、業者は100点だけ選んで5億円という提示だった。それで、『私の余命と志も買ってほしい』と言って、現時点ではウンともイイエとも答えていない」

――市には税金の無駄遣いの声がある
 「結局、識者がいないんです。盆栽はフジヤマ、ゲイシャではないが、日本の伝統文化として各県庁や各国の日本大使館にひとつずつ置くべきものだ。温故知新という言葉がある。古典を大切にしなければ新しい改革もダメになる。中国のパンダじゃないが、国家予算をかけて守るべきこともある」
 「業者は売れる物しか扱わないが、私は何でも買ってきた。先行き、(流行が)どうなるか分からないからね。何年か先に芽を吹くものもある。会社経営もそうだが、盆栽でも公意識を先行させて買い集めてきた。それで、壊滅状態だった業界の救世主と言われたもんです。それを無駄遣い…、今の日本人てのは何なんだろうね。分からないですよ」
----------------------
【たかぎ・れいじ】
 昭和2年、兵庫県生まれ。リコーで複写機のトップセールスマンを経て、31年に明光商会を創業。『MSシュレッダー』で業容を拡大し、トップシェアに。平成元年、株式店頭公開。16年2月、健康上の理由で社長を退任し、現職。盆栽が趣味で、盆栽5000鉢のほか、陶器のコレクションでも知られる。栃木県下野市の高木盆栽美術館を運営する財団法人高木伝統園芸文化振興財団理事長を兼務。

---------------------
『5億円盆栽論争』の発端
 さいたま市によると、旧大宮市時代の13年前から、「大宮盆栽村」=別項参照=の業者からの請願もあって、県と整備計画を暖めてきた。昨年再選された相川宗一市長(旧浦和市長)も盆栽村関連施設の建設を含む盆栽文化村の整備・充実で、現在、年間20万人の来訪者の倍増をマニフェストに掲げた。
 関係者によると、こうした動きの中で昨年6月、地元盆栽業者から「高木氏のコレクションをさいたま市に譲ってもらうというのはどうか」という話が出たという。
 今年7月までに、市長特別秘書が高木氏と接触し、5億円の提示をしたことが非公式に伝わり、市議団らが反発。報道によって、市民の間にも賛否両論が出ている。
 「事務方としては、まだ具体的な行動をしておらず、購入は未決定。施設建設は従前からの目標だが、これも何も決まっていない」(市総合政策担当者)と予算案を提出する前の反発にとまどいを見せながら、「賛否はあるが、盆栽村を地域資源として国内外に発信したい」との意向で取り組んでいる。
---------------------
【盆栽村】
 JR大宮駅から近い、その名も同市大宮区盆栽町界隈のことで、関東大震災を機に東京の盆栽業者が新天地を求め、大正14年に移ってきたのが始まり。ピークには40軒近い業者がひしめいたという。現在も周辺と合わせて10業者が営業を続ける。一角が大宮市に編入された昭和15年、住居表示も「盆栽町」となった。

---------------
BONSAI
 起源は中国唐王朝とされ、日本には平安末期に禅僧によって伝えられたとされる。江戸末期に「盆栽」という名称とともに様式が整備され、大正には展覧会が催されるなど普及した。戦後は米国など外国でも愛好者や展覧会が急増、「BONSAI」は国際語にもなった。イタリアには盆栽学校もあるという。昭和40年設立の社団法人日本盆栽協会の初代会長は吉田茂元首相。最近は、手のひらに乗る小さな鉢を使った「ミニ盆栽」や「草玉盆栽」も出回り、マンション族の若い世代や女性に人気がある。(2006.10.11紙面掲載)

投稿日: 2006年10月24日

トラックバックURL:

ちょいワルフジBLOG

最新記事

夕刊フジBLOGから

コラボ企画

オススメサイト

夕刊フジBLOGモバイル

  • http://yfuji.jp/
    夕刊フジBLOGモバイル
  • 携帯も夕刊フジBLOGモバイル