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「フラガール」の舞台で資料館、80歳の執念

 働いてきた人々の執念がなせる業なのか。炭鉱町には独特のオーラがある。公開中の映画『フラガール』の舞台・福島県いわき市もそんな町だが、同市の常磐炭鉱を徹底的に研究しているのが渡辺為雄さん(80)。

 大正15年、常磐炭鉱の炭鉱住宅に生まれた。
 「自分が生まれた家の真下が炭鉱だった。昭和16年から働き始め、最初はトロッコ操縦をし、その後、炭坑員として38年の閉山まで自分の家の真下を掘っていた」
 しかし、渡辺さんは炭鉱の先行きを見越し、閉山5年前から養鶏業を兼業、閉山後は本腰を入れて取り組み、成功を収めた。炭鉱員時代は、「一生を炭鉱に捧げようと、カンテラやランプの改造を考えたりした」が、閉山後、養鶏業を軌道に乗せた渡辺さんにとって、いつしか炭鉱のことは頭から離れていた。
 ところが…。卵を売り歩いていた某日、運命的に1枚の写真に出合う。渡辺さんが生まれる前に撮影された「自分の家の真下を掘っていた」炭鉱の写真だった。
 「父の暮らし、ふるさとの原風景をぷ―んと思い出した!」。渡辺さんが、炭鉱資料収集に目覚めた瞬間だった。
 当初、集めた炭鉱の資料は自宅の玄関先に置いていたが、「炭鉱関係の資料を見たいと思った人が、遠くから私の家を訪ねるようになって、炭鉱の資料の収集と保存に責務を感じた」。
 渡辺さんは人並みを外れた集中力を発揮し、夫人によると、「夢中になると、夜の9時、10時になっても、おなかも空かないようで、いつまでも炭鉱のことをやり続けた」という。
 その結果、養鶏場を改造した「みろく沢炭鉱資料館」が平成元年にオープンした。
 渡辺さんは3年前からパソコンを始め、資料館の解説文の書き換えに取り組んでいる。80歳になった今も資料館の充実に尽力し続けているのだ。
 「みろく沢炭鉱資料館」には、炭鉱で使われていた各種の道具や写真など多くの貴重な炭鉱資料が集められている。渡辺さんは見学者に炭鉱資料を丁寧に説明するほか、自らが復元したトロッコを実際に動かしてみせる。
 資料館に「チーン」と、電気音が響く。「この音が1回だと止まれ、2回だと巻けの合図です」。資料の解説時より、その声は高揚し、トロッコが巻き上がり始める。動き出したトロッコを見つめる渡辺さんの目の輝きは、トロッコに石炭が満載された炭鉱の日々が戻ってきたかのようであった。(畸人研究学会、海老名ベテルギウス則雄)(2006.10.30 紙面掲載)

投稿日: 2006年11月10日

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