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3年で退職する若者たち、ナゼだ?

 景気回復に伴い、企業側が来春の新卒採用枠を広げたため、企業求人倍率はバブル期並みの2倍近くに及び、学生の売り手市場で推移した。数年前の「就職氷河期」から春が到来したわけだが、『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)なる衝撃的な本が売れている。若手社員に今、何が起きているのか。著者の城繁幸氏(33)と徹底検証した。

【25万部のバカ売れ】
 今年の新卒就職戦線は別項の通り、企業・学生側ともに景気のいい話だが、そこへ水を差すように登場したのが『若者は―』。1日現在、8刷25万部が売れるベストセラーとなっている。
 タイトルも衝撃的だが、光文社が打った書籍広告も《読み進めるうちに手が震えてきた(42歳・管理職)》《黙殺されてきた「若者の声」がやっと日の目を見た(31歳・エンジニア)》といった読者の声を紹介し、非常に気にかかる。
 しかし、著者の城氏は「3年で辞めるというのも選択肢」という意味合いも込めて、タイトルにしたという。
 どういうことか。
 「私が日本的(同書内では昭和的価値観と表現)システムの特殊性に気が付いたのは高校3年のときでした。それまで一生懸命に勉強してきた同級生たちが、大学受験を突破したら一斉に勉強しなくなった。みんな『就職に大学の成績はいらないじゃないか』と。そこで目的を見失っているんです」

【年功序列】
 城氏が批判する昭和的価値観がベースにある、かつての若者の典型的な人生を見てみよう。
 一流大学に合格しても、勉学の目標を失った学生は、「何をやりたい」という強い思いはなくとも、やはり一流企業を目指す。企業側も、人事部が「何でもやります」という学生を大量採用し、各事業部に割り振った。
 そして、まず仕事は雑用に毛が生えた程度。少なくとも意思決定権はなく、当初は給料も低水準に置かれ、先輩からは、「今、必要なのは我慢だ」と諭される。
 実際、中高年の管理職をみると、新人の5倍も10倍も給料をもらい、部下を思い通りに使っている。あの高みにさえたどり着けば…。
 こうしたサイクルが機能した昭和の時代、年功序列は少なくとも待遇面では人に優しい制度だったかもしれない。
 「そのレールは90年代からなくなった。そして若者は、若いうちに我慢しても、今の中高年の勝ち組が得ているような待遇は得られないと気が付いたわけです」

【転職のススメ】
 城氏は、富士通本のタイトルから勘違いする向きもあるが、“成果主義”が悪で、年功序列の復活を持論としているわけではない。
 むしろ逆だ。
 「企業が形ばかり成果主義を導入したとしても、現実には現在、序列上位にいる中高年たちの価値観に反するアクションは起こせない。やはり、身内にはメスを入れられないんです」
 その結果、成果主義は中高年の既得権を維持するために若者から搾取する装置としてしか働いていないという。
 各社が正社員を減らし、派遣社員を増やすのも同じ理由だし、年金にしても支給額の減額と掛け金の増額の動きに同じ匂いを嗅ぎ取る。
 だから、城氏は、「若者は、そんな待遇に気づいた。しかも仕事が向かないとなれば、第2新卒として転職しやすい3年で辞めて、別の職種を探すのも選択肢でしょう」という思いもタイトルに込めたという。
 「彼ら(管理職)を食わせるために僕の人生があるわけじゃない」。同書には、若者の叫びが随所に織り込まれている。

 【来春採用の就職戦線】
 来年度から「2007年問題」と呼ばれる団塊世代の大量退職が始まる。景気回復や業績回復に伴う事業拡大方針と相まって、企業側は将来の人手不足感から新卒採用枠を大きく広げてきた。
 特に金融機関は、三菱東京UFJ銀行が今春実績の3倍以上の2000人の採用を目論む。三井住友銀行も同1・4倍の約1400人。今春実績を前年比で倍増させた、みずほFGは来春も、微増となる2380人規模を採用する予定だ。
 証券業界も3大証券合計で前年比4割増の3100人ほか、トップ企業のトヨタ自動車も2年連続の3000人超(中途含む)と高水準を維持する方針。
 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の久野和禎氏は今年の就職戦線について、「学生優位の売り手市場で、複数の内定から選ぶという状況でした。背景には、景気回復と団塊のリタイアで採用枠が広がったことがあります。企業側も価値観が多様化し、コアな人材は新卒で採りたいが、採りきれなければ中途や第2新卒で補えばいいという考え」と話す。
 学生側の気質は、「ゆとり教育で育った世代と近いせいか、考え方に芯がなく、内定を得ていても、特に不満がなくても、フラフラと就職活動を繰り返すなど優柔不断な面があります。売り手市場だからこそですね」とみる。

 【3年のなぜだ!】
 若者が辞める「3年」というのは、城氏によると、おおむね次のような意識変化がある。
 「入社1年目はまあ一生懸命働く。2年目になると、社会や自分の会社の仕組みというものも見え始める。『何もしない部長がいるが、あれで給料はオレの4倍か』と。そして、自分の乗ったレールがそこまでつながっていないことに気付き、3年前後で転職する」
 だが、現行の人事制度に批判的な城氏は若者に対しても、「90年代半ばから勝ち組・負け組が言われ始め、若者は“格”というものに対して敏感になっている。なんとしても負け組にだけはなりたくない、とものすごくディフェンシブなんです。年功序列の典型の銀行への就職人気は回復しないと思っていたんですが、意外にも人気があるんですよ。残念です」と苦言を呈す。
 そして、やはり受験制度の弊害を唱える。
 「偏差値が高いことは必ずしも優秀ではない。与えられたことはソツなくこなすが、『ホントは何がやりたいの』と聞くと、ウッと言葉に詰まる。そうした制度の外側に生きてきた人は、自分はこれこれがやりたいと明確に言える。若者は極端なのも特権。銀行就職を目指す人より、ホリエモンになりたいという方が好感が持てます」

 【緊急提言】
 若手だけでなく、企業側も変化してきた。
 城氏は、「3年ぐらい前から採用側も、どことどこの会社でインターンをやったという経験がないと採用しなくなった。しかも、かつては3年以内に辞めると、『キャリアもない』『すぐ逃げる』のレッテルで中途採用も困難でしたが、今は“第2新卒”という考えで、転職も容易になっている。つまり大学4年を中心にして前後3年の6年間が就職活動期間といえます。ある意味、自分を試して再チャレンジできるようになってきた」と分析する。
 大学の勢力図も5年以内に激変すると見る。
 「旧帝大といっても東京、京都まで。東北、名古屋はなんとか食い下がっているが、それ以外の“就職力”はほとんど機能しておらず、関関同立に負けている。企業側も、東大を出た、早慶を出たというだけで価値観を感じてはいません」
 ならば、どんな心構えが必要か。
 「勝ち組は狭き門だが、そこに入ってなくても自分がまだ到達していない高みに向かって努力し続けてほしい。他人との競争を基準に考えるのがそもそも間違い。目指すものは自分の中にある。スポーツ選手が最大のライバルは自分という、あの心境が大切。『仕事ではなく、プライベートが生き甲斐』という人は一番賢いかもしれない」(2006.11.06紙面掲載)

投稿日: 2006年11月17日

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