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北朝鮮・金王朝、崩壊カウントダウン

 北朝鮮が10月に強行した核実験に対して、国際社会は国連安全保障理事会で制裁を決議した。わが国も、金正日総書記の威信をくじく目的の「ぜいたく品」禁輸に踏み切るが、北国内では水害の影響で10年来の大凶作になったとされる。孤立深まる“金王朝”は、崩壊へのカウントダウンが切って落とされのか。北情勢に詳しい専門家が、利害関係各国の思惑を徹底検証した。

【大飢饉】
 現在の北朝鮮の人口は定かではないが、2000万人を切る程度だと推測される。そして、1年間に必要な穀物量は500万トンから550万トンが目安とみられる。
 ところが、国連の世界食糧計画(WFP)が10月に公表したところでは、もともとの国内収穫見込み395万トンが今夏の水害で大きく下回ったという。
 早稲田大学の重村智計教授は、「北の内部からは、水害で3万人が死んで、200万トンしか生産できなかった。つまり350万トンが不足だとも伝わってきます。200万人から300万人が餓死した90年代半ばの大飢饉より厳しいのは間違いない」と話す。
 当時は、国際社会が人道的見地から精力的にコメ援助などをしたにもかかわらず、民衆まで届かなかったとされる。元赤旗記者で朝鮮研究家の萩原遼氏は著作などで、「意図的に特定地域の民衆を切り捨てた」とまで指摘している。
 
【ぜいたく三昧】
 それでも、金総書記ら中枢幹部は当時も今も、ぜいたくな暮らしぶりは変わらない。
 そこで今回のぜいたく品(牛肉、マグロのトロ、キャビア、酒類、化粧品、毛皮など33項目)の禁輸となる。暫定リストを公表したスイスも高級化粧品や靴、腕時計、金銀製の食器などを並べている。
 悪い冗談ではないかと思うが、そうではないらしい。金総書記に対する忠誠の見返りとして、これらの品々が“下賜”されてきたからだ。
 国民の生活を犠牲にし、ぜいたくの限りを尽くした主な独裁王朝の末路は別項の通りで、「(せいたく品の禁輸は)金王朝を追い詰めるのに、大いに効果がある」とはジャーナリストの恵谷治氏。
 「むしろ、大凶作の方が政権崩壊とは関係ないかもしれない。前回の餓死者300万人でもビクともしなかった。それより、金正日に選ばれた200万人の中核階級に影響が出るかどうかが問題だからだ」
 まさに国家を私物化し、民衆の犠牲の上に繁栄をむさぼる“独裁王朝”といえる。とすれば、将軍様が自らのサバイバルのために切った核実験カードは“悪手”だったのか。

《米陰に陽に圧力 ブッシュ政権下で処理・恵谷治氏》
 「米国は、金正日がいる限り、北朝鮮が核放棄することはないと考えている。したがって、米国にとって理想の展開は、金正日にとって代わる政権が誕生して、新政権と交渉して核を放棄させるというもの」と、読むのは恵谷氏。
 そのシナリオを実現させるためには、表向きは金融を含めた経済制裁だが、「水面下では米軍による“5030”と呼ばれる秘密工作を実行している」という。
 5030とは、金総書記に対して北軍部の軍事クーデターを誘発させるため、米軍がすでに実施中といわれる攪乱謀略工作だ。
 具体的には、北朝鮮有力幹部の亡命工作や、金総書記に対する中傷ビラの散布のほか、ステルス戦闘機F117を金総書記の居宅上空まで侵入させて圧力をかけるとともに、北の迎撃機には乏しい燃料をさらに費消させるという。
 そして恵谷氏は、「ただし米国は、金正日に代わる後継者に誰を据えるかまでは踏み込んでいないようだ。現実の戦争に発展させることもない。米国が今、朝鮮で戦争ができるなら、すでにやっている。しかし、これら表と裏の追い込みで、ブッシュ政権が続く2年以内に、金王朝はなくなっているはずだ」と話す。

《中北京五輪成功のため現状維持させる・重村智計氏》
 「中国にとって現在、最も関心があるのは08年の北京五輪の成功だ。だから、金正日に代わる政権が望ましいとは思っていても、混乱になることを一番嫌がる。つまり五輪までは現状維持するしかない」と話すのは重村氏。
 北が極めて厳しい状態にあるのは事実だが、すぐ崩壊するほどヤワな体制でもないという。
 「長い目で見ると、体制崩壊は確実に坂を下るように進んでいるが、それが時間切れを迎えるのと、北が核弾頭を持つこと=核をミサイルに搭載できるように小型化を実現する時間とを比べると、後者の方が早いかもしれない。それは中国も望むところではないので、その場合、年50万トンを送っている石油を止めれば、それで体制を崩壊させることは可能だ。中国国境に押し寄せた“難民”はすべて韓国へ送ることになろうが、いずれにしても北京五輪前ということはない」
 その中国にとっての懸念は、北の自壊かもしれない。その点を重村氏は、「あの国の現状では、軍を含めて、後継選びで権力闘争が激化するのは好まないから、とりあえず後継者は世襲でなければもたない。そして、そろそろ後継者が決まっていてもいいはずなのに、未だ決まっていない。金総書記の指導力が落ちている可能性がある。核実験発表の際の労働党機関紙の報道ぶりにも混乱が見えた。どうも政権が機能していないのではないかとも思える」と指摘する。
 それでも、「民衆の6割方は今も金正日を信用している。金体制は、北京五輪まではもちろん、最短でも5年は崩壊しない」と話している。

《韓統一への主導権失い残るは妥協のみ・李英和氏》
 「少なくとも韓国の現政権は、北朝鮮崩壊のシナリオは何も持っていないだろう」とは関西大学の李英和教授。
 李氏によると、今や核保有国となった北朝鮮に対して、韓国が取り得る選択肢は、
(1)韓国自らが核武装して北を吸収する
(2)北に吸収される
(3)永遠に分断国家として生きる
――の3つしかない。
 (1)と(2)は現実的ではなく、「東西ドイツ方式の統一は、コスト負担が大きすぎると嫌がって先延ばしするうちに、韓国の主導権はなくなった」という見方で、その主導権は北が握るという。
 北朝鮮にしても、(1)北から戦争を仕掛けたら、米軍などの反撃により“6分後”の体制崩壊は明らか(2)このまま何もしなければ、制裁効果により食糧やエネルギーが不足となる来年5月で崩壊のベルが鳴る――ため、「米中朝の3カ国で密談して、自衛用に限定した核のみを残し、残りは廃棄。査察も受け入れ、金総書記は改革開放路線を受け入れるという双方の妥協しかない」という。
 ただし、その場合、核は北に残るし、あの将軍様が改革開放路線を選択するのか。
 「持つ者同士の話し合いで、捨てるという結論は出せないだろう。それに金総書記は“君子豹変”する男だ。生き延びるには開発独裁型を選ばざるを得ない。それで、金体制は2―3年は維持できるが、改革路線ゆえ体制は崩壊することになる」という結論だ。

【独裁王朝の末路】
■ルーマニア=チャウシェスク
 国家評議会議長・大統領として20年以上にわたり国家の頂点に君臨した。秘密警察を駆使した言論弾圧や、威信宣伝のための巨大な宮殿建設で悪名を馳せた。89年、一連の東欧民主化の激動の中で、政権崩壊後の新政府組織に逮捕後、即決裁判で処刑。その様子が世界に流され、金日成・正日親子も震え上がったという伝説がある。
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■ハイチ=デュバリエ
 独裁者だった父を継いで弱冠19歳で大統領に就任。対キューバの反共砦として米国からは保護されたが、一族郎党によるぜいたくな生活や蓄財で国民生活は窮乏。トントンマクートという大統領公認の愚連隊による狼藉も悲劇を増した。86年、反政府暴動の中、米CIAの手引きで国外逃亡。財産は没収されたが、フランスで優雅な亡命生活を送っているとされる。
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■ウガンダ=アミン
 軍トップからクーデターで政権掌握。ヒトラー信奉者で、何十万人という反体制派を火あぶりや肉を剃ったりの猟奇的な方法で殺害。その肉を食ったという伝説もあって「人食い大統領」と呼ばれた。ボクシングヘビー級のアフリカチャンピオンだったため、アントニオ猪木と異種格闘技戦が予定されたが、79年、反体制派の攻勢でサウジアラビアに亡命。03年まで推定80歳の天寿を全うした。
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■キルギス=アカエフ
 91年の同国独立前後、改革派として登場したが、14年もの長期政権で次第に強権的になり、一族による汚職や不正蓄財、政権世襲の動きを見せ始めたところで、05年、野党の反政府運動「チューリップ革命」にあっけなくカザフスタン経由でロシアに逃亡した。
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■フィリピン=マルコス
 国会議員から56年に大統領当選。終身大統領を目指して、憲法を停止し全国に戒厳令を敷くなど、軍部と結託した独裁体制を築いたが、83年、政敵アキノの暗殺を機に国民の反対運動が高揚し、86年の大統領選では軍部中枢も離反。対立候補のアキノ未亡人を支持する民衆100万人がマラカニアン宮殿を取り囲み、マルコス一家は米軍のヘリコプターで脱出、ハワイに亡命した。89年病死。(2006.11.27紙面掲載)

投稿日: 2006年12月08日

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