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ソニー・久多良木会長“昇格”の裏事情

 ゲーム業界は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の人事話で盛り上がっている。最大の関心は、同社の“絶対君主”だった久多良木健社長が会長職にスライドしたこと。「久多良木氏温存か、それとも引退の布石か」という点だ。

 久多良木氏はゲーム業界におけるカリスマ的存在。一から作り上げたプレイステーション(PS)とPS2をそれぞれ全世界で1億台以上売り、2004年には米タイム誌の「世界でもっとも影響力のある人物100人」に選ばれたほどだ。
 その状況が変化したのは2005年。きっかけは前年末に発売した携帯ゲーム機PSPのボタンの不具合に対する発言だった。
 「(PSPの使い勝手に不満があっても)購入者が、仕様に合わせてもらうしかない。著名建築家が書いた図面に対して門の位置がおかしいと難癖をつける人はいない。それと同じこと」
 もともと過激発言が多かった久多良木氏だが、この言葉はユーザーから猛反発を受けた。結局、SCEは不具合の無償修理に応じたが、このときの反発がPS3の価格バッシングの下地になったと考える向きもある。
 最大のライバルである任天堂に“腰の低い”社長が登場したのも、久多良木氏には不運だった。任天堂の岩田聡社長は同時期に「自分で何かを作って人を喜ばせることが好き」などと語り、好感度アップに成功した。以後、2人はその対照的な言動を比べ続けられることになる。
 久多良木氏は2005年3月、ソニーがハワード・ストリンガー体制に移行するのと入れ替わる形で、兼務していたソニー副社長職を退任。SCEの社長に専念することになる。そして同年末、創業メンバーの1人だった佐藤明副社長が代表取締役を辞任したころから、久多良木氏の“独裁”が目立ち始めた。
 ゲーム業界の事情通は、「ゲームソフト戦略を担当していた佐藤氏が現場から離れて以降のSCE社内の混乱ぶりは、外部の人間の目にも明らかだった。『ハード偏重の久多良木さんにはついていけない』とこぼす社員も増えた」と語る。
 SCEの社員には、親会社ソニーの出向者とソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の転籍者が多い。今回の人事では前述の佐藤氏が代表権のある副会長に返り咲き、ソフト事業の立て直しを図ることになるが、その佐藤氏はSME出身。さらに、新社長に就任した平井一夫氏(前SCEアメリカCEO)もSME出身だ。ソフトやコンテンツに強いSME勢が“ハードの久多良木”を棚上げした、という構図になる。
 ただし、この状況がいつまで続くかは不透明だ。業界関係者は「どっちに転んでもいい、というような人事ですね」と語る。つまり、「新執行陣が成功すればそれでよし、失敗すれば久多良木氏再登板」という親会社ソニー首脳陣の意図を感じるというのだ。
 久多良木氏については、今回の人事発表直前に「SCEを退社するのではないか」という噂も一時流れた。だが、会長職にとどまったことで復権の目は残された。一部には「社長職から離れて楽になるのだから、またすごいことをやってくれるのでは」と期待する声もある。PS3の今後の売れ行きとともに、SCEの権力闘争にも目が離せない。(2006.12.18紙面掲載)

投稿日: 2007年01月05日

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