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神保町で出会ったマボロシの星杖じいさん
畸人の因果律とでも言おうか、こちらが意図していないのに、一つのテーマで畸人にぶつかり続けることが稀にある。いわゆる「刹那系畸人」との出会いだ。
刹那系は気を抜いた瞬間に出現することが多い。周囲の人間とは時空がずれているというか、空気が異なっている。そして、行動や服装に明らかに主張が感じられる点が特徴的だ。
昨年秋から、畸人じいさん遭遇率が高まっているようで、新年早々の5日午後2時過ぎ、地下鉄の神保町駅でキテレツなじいさんに出くわした。
お茶の水寄り改札を出ようとした際、いきなり目に飛び込んできたのは黄緑色の帽子。ギョとして凝視すると、帽子中央に「☆」の星印がついている。さらに見ると、コートの胸にも帽子と同様の星印。どちらもシックな装いなのに、「☆」と帽子だけが妙にポップで目立つ。
あまりのことに動転して、地下のコンビニに意味もなく入って、じいさんを観察しつつ、カメラを取り出し、遠くから撮影した。じいさんは地下鉄の切符を買った後、柱に寄りかかり休憩をしているように見えた。
「ああ、見ているだけでは畸人Gメンのメンツが立たない」と反省し、コンビニを出て、じいさんに接近する。近づいて判明したのは、じいさんのサングラスが鎖で固定されていることだった。
そして、手には白い杖を持っている。杖は箪笥などで使うつっぱり棒のようだった。ただし、地面に着地するところに吸盤がつき、地面にペタッと引っ付いている。反対部分には吸盤はないので、じいさんが自分で作ったのではないか。
いや、そんなことを考えている場合ではない。とりあえず声をかけねばならない。そう思ったとたん、じいさんは動き始め、スゴイ速さで改札に向かっていく。
「…あっ、あの!」。声をかけようとしたが、タイミングを計ったかのように改札からサラリーマンの大群が押し寄せてきて、じいさんはまたたく間に姿を消した。
まるで、どこかの星からやってきて、一瞬でワープした使者のようだった。残念だったが、正月早々畸人に出会えてうれしかった。「会いたい」という思いを持ち続ければ、“☆杖じいさん”に再開できるに違いないと確信したのだった(根拠はないが…)。(2007.01.15紙面掲載)
