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「血涙 新楊家将」著者・北方謙三さんインタビュー
中国・北宋(960―1127年)初期、戦いを家業として異民族と渡り合った軍閥・楊家の男たちが帰ってきた――。北方謙三さんの長編「血涙 新楊家将」は、2004年に吉川英治文学賞を受けた傑作『楊家将』の続編。中国で『三国志』と並ぶ人気を誇る歴史物語『楊家将』をいかに描きあげたのか、北方さんに聞いた。
――楊家初代、楊業の死から2年後が舞台です
「楊業は元は北漢に仕え、宋による北漢併合で宋の軍閥になった。最強の騎馬軍団を率いた伝説の人物、楊業が死ぬまでが前作、生き残った息子たちの話が続編です。単独で読んでも面白いように書きましたが、なるべく両方買って読んだ方がいいです(笑)」
――楊家の4男、楊四郎が記憶を失い、仇敵の遼に降っています
「続編の時代は戦の間隔があき、より内省的な話になっています。記憶喪失の設定を使うのはずっと“禁じ手”にしていましたが、あえてやってみようと。気がつくと別の人物になっていて、弟妹を手にかける運命を背負っていた男。自分は何者かを問い、過去と対決する姿は、現代に繋がるテーマだと思った」
――四郎が遼で父のように慕う耶律休哥は、実父の楊業を討った男。どの人物も存在感がある
「書き続けて物語を積み重ねるうち、人物それぞれの歴史が重なっていく。次の道をどう選ぶかは、その時点での人物の存在感、生命力によって決まり、人物たちに引きずり回されるようにして書いています」
――ハードボイルド小説を書きつつ、歴史小説に領域を広げたのは?
「妻が夫を殺してバラバラにしたり、最近はしばしば、現実が小説に先行している。小説が人の内面を書くことに向かい、物語性を削ることにジレンマを感じていました。現代に通じるリアリティーと物語の両方を書ける題材が中国史にあって、現代小説では安心して内面的なことを書けるようになった」
――確かに、中国史は物語に満ちています
「『楊家将』では、宋の正史を読みながら、パール・バック『大地』が浮かびました。父子三代にわたる家族物語で、自分の中にあるいろいろなイメージが、歴史上の人物に重なる。自分のまなざしで歴史と人物をきちんと見て書けば、絶えず新しいものが生まれると信じている。次は、漢の武帝時代を『史記』で書きます」
――同じ団塊の世代の定年退職が始まりました
「団塊の世代は、簡単には引っ込まない“世界一になれ”と言われてきた根性の世代でしょ。競争してきたテクニックを、組織のためでなく自分のために売ればいい」
――今月16日に直木賞選考会が行われました
「該当作なしになりましたが、ものすごく議論しました。僕より上の世代は戦争を体験している人たちで、強い上がいるのはいいこと。若い人は戦争も学生運動も経験していませんが、それも悪いことではない。彼らからどんな小説が生まれるか、見極めたい」
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きたかた・けんぞう
1947年、佐賀県生まれ。83年、『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、91年、『破軍の星』で柴田錬三郎賞。05年、『水滸伝』で司馬遼太郎賞。著書多数。直木賞選考委員。
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物語
10世紀末、中国北部の住民は、遼の侵攻に苦しんでいた。宋の北方の守りについたのは楊一族。楊業と7人の息子たちが攻防戦を繰り広げ、うち3人が戦死、2人が行方不明となり、楊業も命を落とす。2年後、生き残った六郎、七郎が楊家軍を再興するが、敵陣に兄・四郎と似た将軍が姿を現す。(2007.01.30紙面掲載)


