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久多良木SCE会長、“退任”の衝撃
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の久多良木健会長兼グループCEOが来月19日に取締役を退任、名誉会長に就任する人事が先ごろ発表された。SCE創業者の一人で、プレイステーション(PS)の生みの親である久多良木氏は、優れたビジョナリーとして尊敬される一方、独断専行ぶりが内外で物議をかもしたこともある。その退任がSCEやゲーム業界、そしてソニー本体に及ぼす影響は大きい。
今回の人事に先立つ昨年12月、久多良木氏は会長に“棚上げ”され、SCEアメリカ社長だった平井一夫氏がSCE社長に就任した。その時点で「プライドの高い久多良木氏が自ら退任を言い出すのは時間の問題」と予想するゲーム業界人は多かった。
今回の退任理由について、SCEはソニー本社との連名で「任期満了」とするリリースを出したが、額面通り受け取る者は誰もいない。現に、「任期とは、いつからいつまでなのか」とSCE広報部に尋ねたところ、広報部は絶句して説明できなかった。
最終的に退任を決断したのは久多良木氏自身だろうが、その引き金を引いたのは12月の人事を断行したソニーのハワード・ストリンガー会長だ。これについて、ゲーム業界関係者は次のように語る。
「ソニーにとって今回の人事は、『SCEはソニーの一部門にすぎない』ということを内外に知らしめるいい機会だったと思います。SCEの創業者であり大株主でもある久多良木さんといえども例外ではない、ということです。これにより、ストリンガー―平井体制が強化されることは間違いありません」
久多良木氏の今後については、「独立して新事業を始める」という説のほか、同業他社への「移籍説」も一部でうわさされている。実際、社長時代にも某社からヘッドハントの話が持ちかけられたことがあるという。まだ56歳という年齢に加え、もともと精力的な人物だけに、“名誉”だけで余生を送るとは到底考えられない。
それより問題は、久多良木氏が去った後のSCEだ。ある社員は「今年の夏はPS3向けのソフトのラインアップが充実するので、頑張ろうと思っていた矢先だった」とショックを隠しきれない表情で語る。
同社の元関係者は、「2000年にPS2が発売されたころの社内には『SCEをソニーと呼んだ社員は罰金』というジョークがあった。SCEがソニーの子会社になった後でさえも『SCEは特別』という意識が残っていた。それが今回の人事で完全に崩された」と語る。歯にきぬ着せない性格の久多良木氏を煙たがる社員は多かったが、大黒柱が去ってしまうとなると、その喪失感は計り知れない。
だが、いまのSCEに感傷に浸っている暇はない。ソニーのゲーム部門の2006年度の営業利益はPS3の立ち上げコストなどがかさみ、マイナス2000億円に達する見込みだ。しかも、今夏にはSCE欧州法人の大幅なリストラも予定されているという。SCEの前途はまだ険しい。
「正直、今後には不安がある。でも、PS2で一度勝てたのだから、また勝てる時がくる。そう思って頑張りますよ」と前出の社員は話していた。残された経営陣はこの言葉を重く受け止めねばならない。(2007.05.10紙面掲載)
