この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
孤独な首相の健康を支える、孤独な“随行医”
辞任表明後、都内の病院に緊急入院した安倍晋三首相。最近は外遊中も点滴が手放せなかったといわれるが、外遊中の首相の健康を管理するのが随行医だ。首相の体調の善しあしが国際情勢にかかわることもあるだけにプレッシャーも大きい。鈴木善幸、中曽根康弘両元首相の2代にわたって随行医を務めた水町重範医師(61)に、随行医の“孤独な戦い”について聞いた。
「総理大臣も最終的な決断を下す際には孤独だが、外遊中の随行医も孤立無援。特に航空機の中ではたった1人で一行100人もの健康管理の責任を負わなければならない」と水町医師は語る。
東京・西新宿で現在、水町クリニックを開業している水町医師が初めて随行医を務めたのは1981年、鈴木元首相が第1回外遊でASEAN諸国を歴訪したときだった。鈴木元首相が首相になる前から担当していたので任されることになったというが、当時まだ34歳。若いという点で、思わぬ冷や汗をかいたことがある。
あるとき、機内で何人もが体調を崩して倒れ、機長に着陸したらすぐに目立たないように車を横付けさせて病人を搬送するよう手配を指示したことがあった。
「さすがにその時は『外遊の首相一行に病人続出、若すぎた随行医』という新聞の見出しが浮かんできた」
しかしその後随行は、87年まで鈴木、中曽根両首相の2代にわたり23回にも及ぶ。歴代最多だ。
「首相が体調を崩してもそれを理由に相手国での行事をキャンセルできないので、明日の朝までに何とかしないといけないとなると、抗生物質の投与量などのルールを度外視することもある。そういうときには勇気も必要だ」
また自らの健康管理は人一倍厳重にした。 晩餐会などで出されても生ものには一切手を付けなかった。
「これは鉄則だね。医者が『最後のとりで』だから」
水町医師は随行医としての経験を「総理の随行医」(大和書房)として1冊の本にまとめた。折しも安倍首相の入院騒動発生の直前。同書でも父・安倍晋太郎外相の秘書官当時のことに触れており、「このごろから、それほど頑健な体とはいえず」という状態だったという。
首相という仕事はハードだ。それだけに首相は絶対的に健康でなければならない。さらに「首相は孤独。それに耐えられる 強靭(きようじん)な精神力の持ち主でないとつとまらないと実感した。首相は普通の人がなってはいけない」と随行医の仕事を通じて確信したという。(2007.09.19紙面掲載)


