この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
瀬名秀明「イヴのみる夢」(3)―自分の一部を機械が操作
酔っぱらって足元がおぼつかないとき、自分の身体が勝手に動いて家まで連れて行ってくれるといいのにと思う。そんな未来は意外と近そうだ。
装着した機械をいわば補助脳として使い、人馬一体ならぬ“人ロボ一体”となることで、自分をより賢く動かし制御する。そんな研究を進めているのが大阪大学の前田太郎教授だ。嬉しいことにこの技術は拙作にちなんで「パラサイトヒューマン」と呼ばれている。
軍事や介護の世界では、昔からパワードスーツ(ウェアラブルロボット)の研究が盛んにおこなわれてきた。映画『エイリアン2』でリプリーが搭乗するロボットを思い出してほしい。しかしこれはとにかく危険で、転倒したら命の保証はないし、皮肉なことだがロボットを動かすには人間が邪魔なのだ。
そこで前田教授は考えた。わざわざロボットを着るのではなく、人間の身体を直接動かしてしまえばいい!
パラサイトヒューマンでは感覚機能に刺激を与えて、装着している人にちょっとした錯覚を起こさせる。たとえば、手に持っている携帯電話をうまく振動させることで、あたかも一定の方向に引っ張られているように思わせる。簡単な方向指示器だ。
さらには耳の後ろに電極をつけて電流を流すと、平衡感覚に錯覚が起きて、まっすぐ歩いているつもりでも、プラス電極の側に曲がってしまう。これを使えば人間の歩く方向を制御できる。とっさの障害物回避や車酔いの防止にも応用できそうだ。
自分の一部を機械に委ねるなんて怖いと思うだろうか?
今後はロボットを信頼した協調作業が大切……あるいはリモコンを握る妻との連携が大切かも?
---------------------------
せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」「ハル」など。(2007.09.21紙面掲載)
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」



