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瀬名秀明「イヴのみる夢」(4)―自分の脂肪でケータイ充電
出先でケータイの電池が切れた。しかしあなたは少しも慌てず、ケータイのコードを手首に刺す。するとたちまちケータイは充電を終え、しかもあなたの血糖値はうれしいことに少しばかり下がる。食べ過ぎたなと思った日は、いつもよりたくさん充電するだろう。
自分の体に入り込んでしまった余計な栄養分を、電気エネルギーに変換して蓄えておく。そんな夢のバイオ電池がいつか登場するかもしれない。
今年8月、ソニーはブドウ糖の溶液から電気を生み出す電池を試作・発表した。ブドウ糖とは炭水化物(糖質)の中でいちばん有名な物質で、私たちは食べたものをブドウ糖にまで消化・分解し、細胞小器官ミトコンドリアの中でエネルギーをつくる。私たちが動いたり考えたりできるすべての栄養源だ。ソニーのバイオ電池はこのブドウ糖の液を酵素で効率よく分解し、まさにミトコンドリアと同じ方法で電気エネルギーに換えることができる。
この飽食の時代、ただ捨てられてしまう食物も、この電池を使えば電気となって再利用できる。しかしもっと技術が進めば、私たちの体内から必要なときに必要な分だけ栄養素を取り出し、電気として使えるようになるかもしれない。生体エネルギーと社会インフラのエネルギーとの完全なる互換性が実現したとき、私たちはダイエットで燃やす脂肪を「もったいない」と感じ、エコ産業を支える電源として活用するようになるだろうか。
すべてのエネルギーは世界と私たちの体の間をめぐり巡る。私たちの体は生きた発電プラントなのだ。停電のとき、近未来の人類は自分の血液で小さな電球を灯すのである。
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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」「ハル」など。(2007.09.28紙面掲載)
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」




