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瀬名秀明「イヴのみる夢」(5)―人間の脳と機械の体を"融合"
「脳の活動を自由に観測できて、かつ操作できなければ、本当に脳のシステムがわかったとはいえない。操作した結果、理論通りに人間の意思・情動・認知が制御できることを証明して、はじめて神経科学は物理と同様の科学になる。しかしこれはまさにマインドコントロールですよ。このような研究を倫理的にどう考えますか」
横浜で開催された世界SF大会で、このようにSF作家たちへ鋭く問いかけたのは、ATR脳情報研究所の川人光男所長だ。
人間の脳と機械の体をつなぎ、双方への働きかけを可能にする技術、それが「ブレイン―マシン・インターフェース」だ。この技術を使えば、首から下が麻痺した患者でも、念じるだけでロボットを動かせる。障害者のコミュニケーションツールとして、あるいはロボットの遠隔操作法として期待が寄せられており、いま急速に発展している技術だ。
脳と機械の通信距離は今後どんどん伸びるだろう。単身赴任先に妻のロボットを持って行き、妻が念じて動かすロボットとテニスを楽しむ、そんな未来も遠くない。
しかしこれは私たちの心身の概念を大きく揺るがす。川人所長は今年中に、アメリカと日本で飼われているネズミの互いの脳と体を、通信で交差接続させる実験を始める。脳はアメリカで体は日本、ないしはその逆というネズミが誕生するのだ。いったいそのとき心身に何が起こるのか?
脳で念じて機械を動かせる医療技術は、機械に脳を操られることと表裏一体だ。いまやSFは“サイボーグの未来”だけでなく“倫理の進化”を描き出すことが求められている。未来の医療は倫理観さえ変えてゆくのだ。
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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」「ハル」など。
(2007.10.05紙面掲載)
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」
