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世界初!SLシュミレーションへGO!

 全国の鉄道ファンが待ちこがれていた「鉄道博物館」(埼玉県さいたま市)が、いよいよ14日オープンしや。見どころはさまざまだが、鉄道好きの記者イチオシは世界初の「SLシミュレーター」。フュージョングループ「カシオペア」のキーボード奏者で、鉄道シミュレーションゲームの制作者としても知られる向谷実さん(50)が手がけたものだ。子供が多く訪れる施設ながら、「あえて操作を難しいままにした」という向谷さんのこだわりがビンビン伝わってくる傑作だ。

【鉄道博物館14日オープン】
 鉄道博物館が報道公開された今月1日、SLシミュレーターの周囲にはまたたく間に人だかりができあがった。実物車両群や模型鉄道ジオラマ、ミニ運転列車など鉄道博物館の呼び物は数あるが、注目は「世界初」の存在に自然と集まる。

 実際に触れてみて、そのホンモノぶりに圧倒された。運転台はD51(通称デゴイチ)の実物。シミュレーションには、ハンドルなどを動かす機関士と石炭をくべる機関助士のペアで参加し、駅を出発してから次の駅に停車するまでの操作を行う。

 走行音や汽笛、揺れまで忠実に再現されている。左右の窓に流れる景色は岩手県のJR釜石線で撮影したもので、ながめていると本当に機関車の中にいるような気持ちになる。

 記者も石炭をくべる機関助士の役を体験してみたのだが、なかなかの難物だった。プラスチック製の模擬石炭を次から次へと釜へブチ込むのだが、機関車が急坂にさしかかると、途端に失速してしまうのだ。

 「むやみにやってもダメ。坂の傾斜を考えて、その手前で石炭をくべないと…」と、かたわらのガイドからアドバイスがかかる。なるほど。

 石炭をくべるだけでもコツが必要なのだから、運転はもっと大変だ。手本を示してくれた機関士役の係の人は複数のハンドルをせわしなく動かし続けている。たぶんガイドがいくら説明しても簡単には運転できないだろう。その分、何回も挑戦した後に「やっとうまく操れた」という充実感を味わえるのかもしれない。そこが向谷さんの狙いでもある。

 鉄道シミュレーションゲームを数多く手がけてきた向谷さんにとって、自らの作品を公の場に展示するのは悲願でもあった。「閉館した交通博物館は鉄道ファンにとってかけがえのない場所でした。その後身である鉄道博物館にこうしてかかわれ、感無量です」と向谷さんは満足げに語る。

 自ら釜石線のディーゼルカーに2台のカメラを持ち込んで映像を撮影し、走行音も実際の録音をもとに音楽家の耳で本物以上に本物らしく仕上げた。それ以上にこだわったのが、運転の難しさを忠実に再現すること。操作を簡単にするのはたやすく、「子供が遊ぶのだからやさしくしないと」という声も多かったが、妥協は一切許さなかった。

 「鉄道の歴史はSLを抜きに語れない。機関士たちは地獄のような熱の中で複雑きわまりない操作をしながら汗まみれ、油まみれになり、それでも何千両ものSLを定刻通りに運行してきた。こうした苦難を乗り越えた先人の努力を後世に伝えることが私の役目だと考えたのです」

 そうして完成したSLシミュレーターはプロをもうならせる出来に仕上がった。現在、JR東日本は機関士の研修用にD51を1両、走行可能な状態で保有しているが、「ベテランの機関士さんに体験してもらった後、『本物に乗っているようにドキドキした。これから新人の機関士には、まずここで研修させることにするよ』と言われたんです。いやー、あのときは本当に涙が出ましたね」(向谷さん)。

 向谷さんの鉄道への 真摯な思い、先人への畏敬の念が結実した“極限の世界”をぜひ体験してほしい。

【入館したら「体験展示コーナー予約機」へ直行だ!】
 JR大宮駅で埼玉新都市交通に乗り換え、1つ目の「鉄道博物館駅」で下車。入館料は一般1000円、小中高生500円、幼児200円。

 自動改札機を通り過ぎて中に入ったら、まず目の前にある「体験展示予約機」に直行しよう。ここでSLシミュレーターや屋外にあるミニ運転列車の試乗、模型鉄道ジオラマの閲覧が予約できる(SLシミュレーションのみ500円の別料金がかかる)。館内に3台ある電車シミュレーターの予約は不要。

 1階のヒストリーゾーンには約40台の車両がズラリ。写真撮影ポイントだ。交通博物館にはなかった特急、急行車両や、当時の駅を再現した行き先表示板などは見逃せない。中央の転車台は決められた時間に回転し、SLのC57が空気圧縮機を使って汽笛を場内に響かせる。転車台は2階から見下ろすのもいい。

 2階には、交通博物館でも大人気だった模型鉄道ジオラマがある。上演時間外には自由に出入りできる。疲れたら休憩スペースのある3階ビューデッキへ。窓の外を走る本物の新幹線を見ながら、しばし休息。鉄道ファンでなくとも、満ち足りた時間が過ごせること請け合いだ。

【懐かしの味を「日本食堂」で堪能】
 かつて、交通博物館には特急の食堂車を模した「こだま型食堂」があり、人気だった。鉄道博物館にも、ここならではの昼食が各種用意されている。

 1階の「日本食堂」(120席)には昭和30―40年代に日本中を走り回っていた特急の食堂車をイメージしたメニューが勢ぞろい。女性店員のメイド風ユニホームも当時を再現したものだという。

 定番のカレーは小麦粉をいためて作るレトロな「懐かしのカレーライス」。「中華風あんかけご飯」は上越線特急「とき」の名物だった八宝菜ライスをイメージした。「ベロネーズ」という聞き慣れない名前はスパゲティのカツ乗せハヤシソースがけ。銀座発祥の「カツカレー」は列車食堂によって全国に広まったと言われている。混雑で食堂に入れなければ、博物館限定の駅弁「上野弁当」も販売されている。

 現在、食堂車を連結した列車は寝台特急「北斗星」などわずかだが、食堂車が健在だったあのころの味は確かにここにある。窓のすぐ外を在来線が走っており、電車を見ながらレトロな雰囲気で食事が楽しめる。

《カフェテリアの主なメニュー》
ハンバーグライス   850円
懐かしのカレーライス 700円
カツカレー      850円
ハヤシライス     700円
中華風あんかけご飯  600円
ベロネーズ      850円
カツサンド      700円
お子様セット     750円
生ビール       400円
上野弁当       1000円

【さらば、交通博物館】
 鉄道好きで田舎育ちの記者にとって、「東京へ出かける」と「交通博物館へ行く」は同義語だった。「交通―」と名が付いていただけあって鉄道だけでなく、新たな博物館ではほとんど展示がなくなってしまった船舶、自動車、航空機のコーナーも充実しており、男の子の好奇心を十分に満たしてくれたものだ。

 JR秋葉原駅近くにあった交通博物館は1936年、中央線にあった万世橋駅に併設されてオープン。後に同駅が廃止され、建物は博物館専用となった。

 建物には昭和初期の香りが漂い、特に館内のらせん階段には独特の味があった。老朽化などで昨年5月に閉館。その直前、万世橋駅の遺構が初めて一般公開された際にデジカメをぶら下げて見学に行き、調子に乗って200枚近く撮ってしまった。

 20年ほど前の小学生のとき、4階の「こだま型食堂」で、いまは亡き伯父と食べたスパゲティミートソースの味は忘れられない。鉄道関連の展示内容が充実した新たな博物館の誕生はうれしいが、思い出の場が消えてしまったのは何とも寂しい。
(2007.10.10紙面掲載)


投稿日: 2007年10月28日

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