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瀬名秀明「イヴのみる夢」(6)―「オヤジ臭さ」撃退!

瀬名秀明 A氏は毎朝、赤と黄と緑色の錠剤を飲んでから出勤する。営業職なのに酒が飲めない彼はいつも気苦労が絶えず、娘にも「オヤジ臭い」と睨まれる始末。そこでA氏は医院を訪れ、自分に最適のサプリメントを処方してもらった。

 相変わらず酒は飲めないが以前より身体も軽くなったし、おじさん臭さも消えたようだ。それまでむりやり酒を飲ませようとしていた取引先も驚いている。

 アルコールはまず体の中にあるADHという酵素によって悪酔いの原因である有毒なアルデヒドに変換され、さらにALDHという酵素で無毒な物質に分解される。このうちALDH2という酵素が生まれつき少ない人は下戸で、これはむりに飲んでも改善されない。

 なぜヒトはアルコール分解酵素を持っているのか。実は体内で有害な活性酸素がアルデヒドの生成を促している。おじさん臭さの正体はノネナールというアルデヒドで、つまりおじさん臭くなってきたら、それは加齢に伴って活性酸素を除去する能力が落ちてきた証拠なのだ。ALDH2の働きは、このアルデヒドを解毒することで、間接的に活性酸素の害から身を守ることだったのである。

 最近はADHやALDHの活性の組み合わせによって酔い加減が決まることや、これらの活性が脳梗塞(こうそく)やアルツハイマー病に影響していることもわかりつつある。これら酵素の本来の働きを援助して、別の角度から活性酸素の除去を促進してくれるサプリメントができれば、それは夢の医療となるだろう。

 飲酒量は変わらないかもしれないが、おじさん臭さやアルツハイマー病のリスクが減るのなら万々歳だ。ウーロン茶で乾杯しよう。

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せな・ひであき
 小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」「ハル」など。
(2007.10.12紙面掲載)

■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」

投稿日: 2007年10月31日

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