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瀬名秀明「イヴのみる夢」(7)―「ペットが分身に?」

 奇妙な施設で育った男女。彼らは金持ちたちが自分の病気を治すために、新しい薬物療法の練習台としてつくったクローン人間だった。彼らは施設から脱出を試み、裁判を起こし、人権を訴える……。

 これが今までの典型的な物語だった。これからは違う。あなたは自分の肝臓をその身に宿したネズミをペットにして、もし自分の肝臓に病気が見つかったらそのネズミを医療施設に預け、新規の薬物療法を事前に試してもらうのだ。

 新薬を開発する際、どうやってその効き目を評価するかが問題となる。前臨床試験では肝臓の培養細胞にクスリを振りかけて作用を調べるのだが、培養細胞と本物の肝臓ではやはり効果が違う。かといってヒトの肝細胞は、実験動物に移植しようとしても免疫作用で拒絶されてしまう。

 そこで近年、マウスの遺伝子を変化させてうまく免疫力を下げ、ヒトの肝細胞を受け入れられるようにする研究が進んでいる。つまりこのマウスは驚くことに、ヒト化した肝組織を持っているのだ。このマウスにクスリを投与すれば、ヒトの肝臓への影響が直接わかる。

 「患者からすぐに肝細胞を取り出して実験に使える施設はごくわずか。この技術を使えば多くの医療機関で利用でき、治療にも貢献できる」とオレゴン幹細胞センターのマーカス・グロンプ博士は太鼓判を押す。

 しかしこれは別の意味でこわい世界だ。自分の肝組織を持つネズミに、患者は感情移入してしまわないだろうか?

 いや、きっとそのころには医療倫理も成熟して、前臨床試験の手法も洗練されていると信じたい。あなたのペットは元気になって戻ってきて、勇気を与えてくれるはずだ。
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せな・ひであき
 小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」「ハル」など。(2007.10.19紙面掲載)

■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」

投稿日: 2007年11月07日

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