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瀬名秀明「イヴのみる夢」(10)―仮想空間で運動障害をリハビリ
アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインは、1942年に「ウォルドウ」という小説を書いた。生まれつき身体に障害を持つウォルドウ氏は、ほぼ無重力の宇宙空間に居住基地をつくって生活している。ここなら自分の肉体を酷使せずにすむからだ。彼はロボット技術の天才で、地球上のロボットを遠隔操縦して地上の技術者たちと共同研究することで生計を立てている。物語の最後で彼はナノマシンを操縦して自分の体内に入れ、外科手術で障害まで治してしまうのである。
この小説は有名となり、ウォルドウは遠隔操縦型ロボットの代名詞となった。そしていま私たちは遠くのロボットだけでなく、脳で思うだけで仮想空間の自分も動かせる。
慶應義塾大学の牛場潤一専任講師は、脳の活動をリアルタイムで仮想世界「セカンドライフ」のキャラクターへと伝える技術を開発した。頭の中で運動をイメージするだけで、電脳世界のCGキャラクターを動かせるのだ。今後は運動障害のある人に利用してもらうことで、リハビリへの応用が期待できる。
実世界で歩くことのできない人が、仮想の世界では自由に歩き、走り、ダンスできる、そんな新しい世界観が生まれる。注目度だけが大きくて実態を伴わないともいわれる「セカンドライフ」だが、実は医療や高齢社会のフロンティアとしての可能性に満ちている。
仮想世界ばかりに潜り込んでいたら、かえって健康を害すると思われるだろうか? いや、もうひとりの自分が健康であるとき、私たちは元気や勇気をもらうはずだ。仮想世界の自分が明るく笑うのを見て自分も病室で笑顔を取り戻す。そんな未来はきっと訪れる。
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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」「ハル」など。(2007.11.02紙面掲載)
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」

