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“狭苦しい”家もルール次第で“狭楽しく”
念願のわが家、娘と息子、2人の子供にはそれぞれの部屋を与え、やっと親たちに静寂な暮らしが戻った。と、あるとき中学校に出かけた息子の部屋からテレビかオーディオの音がするからとドアを開けて部屋に入って驚いた。寝坊して慌てて出ていった息子の部屋にはあらぬ写真や雑誌が散乱し、おまけにインターネットの画像からエッ!? こんなものが見られるの? と、母親はがくぜんとした。
受験を控え、勉強部屋として与えたつもりの子供部屋で、今まで想像もしたことがなかった子供の一面を見てしまったのだ。母親はしばし呆然(ぼうぜん)として家事も手につかないありさま…。
しかし、問題はその夜に起こった。塾から帰った息子から今までに見たこともない形相で「オレの部屋に入るな! カギを付けろ!」と怒鳴られたのである。ちょうど帰った父親も息子のその言動に驚き、訳も分からないままもみ合いとなった。幸い父親の体格がよくて大事にはならなかったものの、今までがあまりにもよい子だっただけに夫婦はただただ困惑するのみ、本当に鍵をつけるべきかどうか悩んでしまったと言う。
思春期の子供を抱える家庭ではありがちな騒動なのだが、問題はこの鍵。狭い家の中で鍵をかけて過ごす子供などあってはならないこと。まずは鍵をかけて過ごしたいほど、広く快適な子供部屋にしたことが問題だ。パソコンはもとよりテレビやコンポなど至れり尽くせりで、冷蔵庫まで置いてある子供部屋もあると言う。
リフォームや新築の際に、子供部屋は限りなく狭く、むしろ着替えや寝るだけのコーナーとし、その余った面積で、リビング・ダイニングを広く魅力的な家族の勉強コーナーをつくることだ。
そして今、「鍵を付けろ」は、部屋のドアにではなく、彼らのクロゼットの扉、あるいはライティング・ビューローのように机そのものに鍵を付け、彼らのプライバシーを守ってやることが大切。
さらに彼らを1人の大人と認め、必ずノックをしたり、自分で部屋を片付けさせるなどのルールをつくることが先決だ。
四十数年間で2000以上の家族の家を設計してきた建築家・天野彰が、今あえて“減築家”として提案する究極のスリムな住まいづくり。これは増築を重ねて膨れ上がった住まいにとどまらず、都市や社会そして経済におよぶ生き方の知恵だ。
「高齢化社会でかつ都市に住む以上、住まいは“すまい”ではなく“せまい”だ。その狭さから逃れ、広くすれば家庭経済が狭くなる。郊外のそのまた郊外に住めば、家族や友人とのつきあいが狭くなる。“狭さの三すくみ”。しょせん狭さから逃れられないのなら、狭苦しさの“苦”を取り去り“楽”に。そう“狭楽しく”住む。これがこれからの住み方生き方だ」
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あまの・あきら
1943年愛知県生まれ。日大理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。最近著「六十歳から家を建てる」(新潮社)など著書多数。(2007.11.05紙面掲載)

