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瀬名秀明「イヴのみる夢」(11)―体外離脱でメンタルヘルスケア

イヴのみる夢 自分の魂がふわりと体から離れ、ベッドに寝ている自分を見下ろす……そんなふしぎな体外離脱体験を聞いたことがあるかもしれない。脳の一部が虚血状態に陥って幻覚を見るのだともいわれるこの体外離脱を、バーチャルリアリティー技術で再現してしまおうという研究が昔からある。

 筑波大学の岩田洋夫教授はかつてフローティングアイという装置を作った。風船の底部に360度見渡せる凸レンズをつけ、そこに映る映像をカメラでとらえる。風船の下であなたはゴーグルを装着し、カメラの映像を見ながらゆっくり風船を離すと、自分の魂が空へ昇ってゆくような気分になる。

 このとき私たちはカメラの位置に自分の体の幻を感じてしまう。最近アメリカの一流科学誌「サイエンス」に体外離脱の論文が掲載されて話題となった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のヘンリク・エアソン氏は、座った人の背後に立体カメラを設置して、そこから見える背中の映像をゴーグルで見せながら、その人の胸に触ってみた。そのとき同時にカメラの前でも金づちを動かすと、ゴーグルを着けた人は体外離脱した幻の自分が殴られたように感じたのだ。

 今後ユビキタス情報社会が発達して、あらゆるところにカメラが置かれ、その映像を自在にコンタクトレンズから受信できるようになったらどうなるか? いつでも私たちは自分の体を別の位置から見下ろせるようになる。この技術は私たちのメンタルヘルスケアに大いに役立つかもしれない。

 カッカして自己集中できないとき、冷静さを取り戻すために、目を閉じ自分の体を外側からイメージする方法がスポーツ選手などに知られている。体外離脱の状態を想像することで自分を客観視するのだ。

 イライラしがちな人や、大きな悲しみから立ち直れない人にも体外離脱トレーニングは有効だ。自制心を失ったときは言動も粗雑になってしまいがち。ときどき自分を外から見直して、美しい立ち振る舞いと平常心を取り戻そう。
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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」 「ハル」など。

■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」

投稿日: 2007年12月05日

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