この記事を読む方におすすめの記事
今!気になるレビュー
建築家、天野彰の語る家(3)「家は夫婦が主人公」
■狭・楽しく生きる
あっという間に子どもたちは成長し家を出ていく。するとその家のことを“エンプティーネスト”と呼ぶという。いわば“空き巣”である? とんでもない! 家は夫婦が住むところ、生きていくところだ!
しかし、現実はどうもそのような家が多い。あの大きな被害を出した阪神淡路大震災のときもそうした老夫婦が住む家が倒壊し、多くの被災者を出した。2階に子どもたちの重い“ 残骸(ざんがい)”を残し、手入れも行き届かない比較的大きな家がこうした地震などの災害に弱い。今、世の中は核家族化が進み高齢化の時代に、そうした“老いた家”が急激に増えている。
妻は「システムキッチン」夫は「書斎」に夢をはせ、結果、今誰もいないダイニングリビングと、物置化した「書斎」と「子ども部屋」が残る。えてして会社人間の夫が陥りやすい、妻や子どもたちの日常を無視した合理的な家づくりを進めるとこうした失敗をしやすい。反対に妻だけで子育て中心の家づくりも先が見えてこない。
新築もリフォームも主人公は夫婦で、最後まで住むのも夫婦なのだ。この機会に夫婦の距離を縮め、生涯の家にまとめていく工夫と努力が必要となる。
家づくりは夫のやるべきこと、妻のやるべきことの「分業」が必要となる。想定される家族変化と建設費や維持管理費などの経済シミュレーションは夫の仕事。暮らしのドラマづくりと演出は妻の仕事。これには介護や同居などのシリアスな問題も含まれる。これをすべて妻に任せきりにしたために失敗した例も多い。反対に家づくりを機に夫婦の関係が修復した例も多い。家づくりは夫婦にとって、結婚、出産に次ぐ第3の試練であり、長い人生へのスタートでもある。
子育て優先の家は彼らが巣立った後、まるで抜け殻のようになる。そこで私が提唱するアナログ式の「住まいの時計」=イラスト=で、わが人生を眺めてみてほしい。家は育児型、社交型そして養老型へと15年ごとに変化していく。すると子育ての期間があまりにも短く、老後があまりにも長い! それこそ夫婦の“愛の時計”で、家は「夫婦の家」であることがよく分かる。
その夫婦の家で忘れてはならないのは色気だ。大人の「男と女」、その「男と女の家」をイメージする。するとリビングは大人の空間となり、子どもたちはそうした親たちを見て大人に育つ。今“子どもの大人”が多くなったのは子育て中心の家で育てられた大人だからかもしれない。「夫婦の家」は案外クールで、努力しないでいると寂しいものとなる。
-----------------------------
あまの・あきら
1943年愛知県生まれ。日大理工学部卒。一級建築士事務所アトリエ4A代表。最近著「六十歳から家を建てる」(新潮社)など著書多数。
次回は「子どもに部屋を“貸す”」子ども部屋は将来の親の書斎やアトリエ。(2007.11.19紙面掲載)
(2)「夫・婦寝室」の間の「・」が肝心!
(1)“狭苦しい”家もルール次第で“狭楽しく”
