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静寂に身を置くたびキーンと耳鳴り

耳鳴り Cさん(41)は孤独だった。帰宅するのは毎晩11時を過ぎる。しかしそこで待っているのは暖かい家族のだんらんではなく、不気味なまでの静寂だけ。Cさんの耳には「キーン」という耳鳴りだけが響き渡るのだった。

 妻と娘との3人住まい。妻とはこの4年間言葉を交わしていない。理由はわからないが、とにかくCさんのことが嫌いらしく、会話どころかCさんの前にも出てこない。初めは間に入って連絡係を務めていた中学生の娘もいつしか妻側に付いてしまった。つまりCさんは、家では何年も誰とも会話をしていないのだ。

 最初の耳鳴りは半年前。静まり返った食卓で1人ビールを飲んでいたとき、「キーン」という音をはっきり聴いた。以来Cさんは、静寂に身を置くたびにこの耳障りな音に悩まされることになる。

 「耳鳴りには脳動脈瘤などが原因で、本人以外の人にも聴こえるものもあるが、多くは当人にしか聴こえない。普段は周囲のノイズでかき消されているが、静寂が訪れると聴こえてくる。神経質な人ほど敏感に感じ取るので、それを気にしてまた悩むことになる」と語るのは、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科の池田勝久教授。

 ストレスなどによって内耳の中の“音を感じ取る細胞”が興奮して、実際には音がしていないのに「音がしている」と同等の信号を脳に送ってしまうのがその仕組み。

 「ビタミン剤や内耳の血行をよくする薬、あるいは抗不安薬が効くこともある。他にもTRTといって実際に音を聴かせて耳鳴りに慣れる治療法や、心療内科的にカウンセリングで対処することも」と池田教授。

 いずれにしてもストレスが引き金になることの多い症状だけに、精神的な不安を取り除くことが重要だ。Cさんの耳に平安が訪れることはあるのだろうか…。(2007.12.06紙面掲載)

投稿日: 2007年12月21日

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