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数独の父・鍜治真起(かじまき)の「競輪百景」 第6景「無料バスでの楽しみは・・・」
競輪場と最寄り駅を往復する無料バスは、帰りが面白い。
「ちょっと勝ったら、すぐ帰ればいいんだよ」
「そうだ。いればすっからかんになるに決まってんだからな」
バスの中は、どこかの声のでかいじいさんの話が皆に聞こえるので、他人はしゃべらずに黙って聞くはめになる。合いの手を入れるのは、トナリの他人だ。一瞬の競輪仲間となる。
「この前よぉ、50万円とって、すぐずらかったよ。タクシーでな」
「今日は全然荒れなかったなぁ。あいつがポカしやがって」
「記念はダメ。若けぇのが名前売ろうと思ってぶっ飛ばすから、ラインになっちまう」
「えっ、今日は記念じゃないよ。A級さ」
「そうか。でもダメな日はダメなんだよ。グランプリってのはいつだ?」
「来週だから、それまでおとなしくしてな」
「呼吸ぐらいさせてくれよ」
途端に大笑いする、横のおばあちゃん。
いい光景だ。
小さな楽しみは、当たることだけではない。笑えることなのだ。単純に、気兼ねなく、自分の生理に反応することなのだ。
会話に脈絡はいらない。ここまで生きてきたじいさん、ばあさん、心おきなく興奮して、血の流れをよくしてください。私もそんなみなさんを見習います。 ((株)ニコリ”非常勤”社長)



