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『十五万両の代償―十一代将軍家斉の生涯』佐藤雅美著

十五万両の代償―十一代将軍家斉の生涯 うらやましいことか、同情すべきことか分からないが、一夫多妻で知られるオットセイは、繁殖期には数十頭のメスとハーレムを作り、繁殖に励むという。

 ハーレムならぬ大奥で53人の子供を作り、「オットセイ将軍」とも呼ばれた家斉が主人公。だが実際には老中首座として家斉の意を受け化政文化の爛熟期を演出した水野忠成などの老中や家斉を操って田沼意次を追い落とした実父の一橋治済などが陰の主人公ともいえる。

 田沼と松平は「白川の清き流れに魚棲まず濁れる田沼いまは恋いしき」という狂歌で有名で、「白川」は奥州白河の藩主だった松平定信を指す。「清き流れ」は田沼時代の賄賂政治を刷新しようとした定信の寛政の改革だが、度を越した倹約令で世は一挙に不況に陥った。

 家斉がオットセイになったのも、家斉の前に、定信をはじめとする老中連が立ちはだかって何もさせないため、女色に走ったと著者は解釈している。ただし53人の子供の嫁、婿入りの支度や、父一橋治済を太政大臣にするための無理から財政は再び窮迫するが、それは後の話。

 15歳で将軍になった家斉が、寛政の改革の流れを継いだ定信らの一統から解放されたときはすでに45歳になっていた。「倹約はもう飽きた」と側近の水野忠成に財政改革を命じ、忠成は貨幣の改鋳という手段で幕府の財政を潤し、その儲けを惜しみなく使ったから世はまれに見る好景気に沸いたという。

 江戸幕府の権力と、京の宮中の権威との複雑な駆け引き、賄賂の横行。テレビでは人気の天下の副将軍・水戸黄門や火盗改・鬼平こと長谷川平蔵や、遠山の金さんこと北町奉行・遠山景元などの実像も興味深い。

 まあ、よく調べたもの、と舌を巻く話がびっしり、詰まりすぎるほど詰まった大力作の長編である。(講談社・1995円)

「十五万両の代償―十一代将軍家斉の生涯」


投稿日: 2008年01月19日

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