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瀬名秀明「イヴのみる夢」(17)-“予知”能力もトレーニングできる
技術者であるFさんにとって初夢の準備は、頭部に小さな装置をつけて寝ることだ。この装置は脳に微弱な電気刺激を与えて、少しばかりモチベーションを高めてくれる。それだけではない、実はこの刺激はFさんに未来の夢を提供してくれるのだ。
私たちはどうやって自分の意思を決めているのだろう? いまブレイン・マシン・インターフェース技術で人の意思決定の様子を脳科学的に外から観測する研究がさかんにおこなわれている。脳の前頭連合野は私たちの未来の行動を決める重要な場所だが、ここでの神経細胞の活動はどうなっているのだろうか。
産業総合研究所の長谷川良平博士は、サルを訓練して、いくつかの絵を順番に見てゆくという課題をさせ、その前後で脳の活動を調べた。すると課題をする前後の時間に活動する神経細胞が見つかり、それは正答率を反映していたのだ。
神経の活動といえばこれまで「いまおこなわれていること」を反映したものしか計測されなかったのだから、数分前のことや数分後の未来を予測しているこの神経活動の発見は画期的だ。正答率に応じて過去を振り返り、未来へのモチベーションを高める働きがあるのかもしれない。この活動を調べれば、人がどのくらい意思を固めたか随時予測できるようになる、と長谷川博士はいう。
しかし逆にいえば、この活動を外部から操作することで、未来への意思や予測能力を増幅させることも可能だ。さらに研究が飛躍的に進めば、未来を考え、予測する潜在的な能力をトレーニングできるようになるかもしれない。数分後といわず数年後の未来まで見通す確かなモチベーションと判断力である。
Fさんの会社では年頭にチームリーダーが集まって未来へのヴィジョンを語る会が開かれる。皆が語る初夢に、Fさんも大いに刺激を受けている。ここ数年は新年会から新しい開発のアイデアが次々と生まれ、会社の成績も上々なのだ。未来をつくる初夢に、Fさんのやる気も上向きである。
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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」 「ハル」など。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
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(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」




