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オスカー誰に大予想 第80回アカデミー賞
映画界のビッグイベント「第80回アカデミー賞」の授賞式が2月24日夜(日本時間25日午前)、米ロサンゼルス・ハリウッドのコダックシアターで行われる。米脚本家組合のストライキで開催が危ぶまれたものの、直前にストも終結して一安心だ。今年は骨太で血なまぐさい異色作が多くノミネートされ、その賞レースの行方も注目。映画評論家、垣井道弘氏の受賞予想を交えながら注目作を紹介する。
■作品賞
「作品賞」争いで激しく競っているのは「ノーカントリー」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」。どちらも衝撃的で重いストーリーで、デート向きではないが、映画好きにはたまらない作品だ。
米国とメキシコ国境を舞台にした犯罪劇「ノーカントリー」について垣井氏は、「死体の数で勝負しているのか、というぐらい激しく、好き嫌いが分かれる作品。しかし、登場する殺し屋はすごい。圧縮空気ボンベを使って次々とぶっ殺す。演じているスペインの俳優、ハビエル・バルデムが助演男優賞を獲るのは間違いない」と語る。
「ゼア―」は、石油王にのし上がっていく男の強欲ぶりな半生を描いたもので「これも悲惨な映画。だが、大河ドラマ風で見応え十分」(垣井氏)。製作がディズニーというのも意外な骨太作品だ。
両作品は前哨戦となる米国の各映画賞でも激しく競っている。いまのところ「ノーカントリー」がナショナル・ボード・オブ・レビューや、ニューヨーク、シカゴ、ボストンなど各地の映画批評家協会賞、米俳優組合賞や監督組合賞など100近い賞をゲットしてリード中だ。
ジョージ・クルーニー(46)主演の「フィクサー」も注目。ニューヨークの法律事務所に勤務する“もみ消し屋”が巻き込まれた陰謀と主人公の心の 葛藤(かつとう)をドラマチックに描いたサスペンス。7部門でノミネートされている。
これら有力3作と色合いが異なるのが、ゴールデン・グローブ賞を制しアカデミー賞でも7部門でノミネートされた英国発の悲恋ドラマ「つぐない」、妊娠した女子高生の成長ぶりをコメディータッチで描く「JUNO/ジュノ」。なかでも「JUNO」は昨年秋にわずか7館で公開されたが、あっという間に2000館に拡大。興行収入も1億ドルを突破するなど絶好調だ。「血まみれの悲惨な作品ばかりなので、投票する会員の人気を集めるかも」と垣井氏は言う。
■監督賞
監督賞は「ノーカントリー」のコーエン兄弟が最有力。直前に米監督組合賞を得たことも心強い。監督組合賞が始まった1949年以降、同賞を受賞してオスカーを逃した例は6回しかないからだ。
対抗は「潜水服は蝶の夢を見る」のジュリアン・シュナーベル監督。脳 梗塞(こうそく)で左目のまぶた以外動かなくなった元雑誌編集者が、瞬きだけでつづった自伝を映画化した。「フランス映画なので賞は獲れないだろうが、カンヌやゴールデン・グローブでは評価された感動作」と垣井氏。また、「JUNO」のジェイソン・ライトマン監督はまだ30歳で今後の注目株。父は「ゴーストバスターズ」などの娯楽作で知られるアイヴァン・ライトマン監督だ。
■主演男優賞
主演男優賞は「ノーカントリー」に主演した“元祖カメレオン俳優”で屈指の演技派、ダニエル・デイ=ルイス(50)が「当確」。対抗馬のジョージ・クルーニーでさえ「彼はあまりにも素晴らしい演技をしている」と絶賛するほどだ。主演した「ゼア―」では「男の野望と破滅をリアルに演じ、そのすごみには見ているこちらの背筋が凍りそうだ」と垣井氏。「マイ・レフトフット」以来2度目のオスカーを手にすることは間違いない。
「スウィーニー・トッド」のジョニー・デップ(44)は今回が3度目のノミネート。「人気と実力は文句なしだが、 復讐(ふくしゆう)に燃える殺人鬼の役でオスカーを獲らなくても、という雰囲気がある。いずれは獲るだろうが」(垣井氏)。ヴィゴ・モーテンセン(49)は鬼才デヴィット・クローネンバーグ監督の新作「イースタン・プロミセズ」で、ロシアン・マフィアの運転手役を好演。入れ墨あり、全裸での格闘シーンもありで、体を張った演技を披露している。
■主演女優賞
主演女優賞の話題は、「エリザベス:ゴールデン・エイジ」で主演、「アイム・ノット・ゼア」で助演女優賞にWノミネートされたケイト・ブランシェット(38)。Wノミネート過去に11回あるが、両方を制覇した俳優はゼロだけに達成すれば快挙だ。98年公開「エリザベス」の続編で、当時と同じ賞でのノミネート。同じ人物を演じて同じ賞で候補になるのも珍しい。
ただ、「本命は『アウェイ・フロム・ハー』のジュリー・クリスティだろう」と垣井氏。65年に「ダーリング」で主演女優賞に輝いた66歳のベテラン女優だ。今回は、夫以外の男性に思いを寄せるアルツハイマー症の女性を演じている。前哨戦もほぼ完勝で、難病役という点も会員の票を集めそうだ。
■その他の話題
気になる日本人は、エディ・マーフィー主演の「マッド・ファット・ワイフ」(日本ではDVD発売)で特殊メークを担当した辻一弘氏(38)が唯一、「メイクアップ賞」でノミネート。辻氏はマーフィーを中国人の男性や太った女性に変身させた。昨年の「もしも昨日が選べたら」に続いて2年連続のノミネートだ。
外国語映画賞には、浅野忠信(34)が主演する「モンゴル」(独・カザフスタン・露・モンゴル合作)がノミネートされた。これを受け、日本でも 急遽(きゆうきよ)4月5日公開が決まった。
今年のアカデミー賞は、やけに男臭い雰囲気になりそうだが、「息子をイラク戦争に送り出した元軍人役のトミー・リー・ジョーンズが主演男優賞にノミネートされたことは注目だ」と垣井氏は話す。「イラク戦争の終結に希望を持てないなか、典型的な愛国者を演じたジョーンズが国旗を逆さまに掲げる。それは助けを求めるサイン。いまのアメリカを象徴しているようだ」
映画自体を味わうもよし、その背景に思いを巡らすのもよし。アカデミー賞の楽しみ方は奥深い。
《作品賞》
ノーカントリー(3月15日)
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (4月下旬より)
フィクサー(4月12日)
つぐない(今春)
JUNO/ジュノ(6月)
《監督賞》
ジョエル&イーサン・コーエン「ノーカントリー」
ポール・トーマス・アンダーソン「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
ジュリアン・シュナーベル「潜水服は蝶の夢を見る」(公開中)
トニー・ギルロイ「フィクサー」
ジェイソン・ライトマン「JUNO/ジュノ」
※カッコ内は日本公開日・時期
《主演男優賞》
ダニエル・デイ=ルイス「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
ジョージ・クルーニー「フィクサー」
ジョニー・デップ「スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師」 (公開中)
トミー・リー・ジョーンズ「告発のとき」(初夏)
ヴィゴ・モーテンセン「イースタン・プロミスセズ(原題)」(初夏)
《主演女優賞》
ジュリー・クリスティ「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」(初夏)
ケイト・ブランシェット「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(公開中)
マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(DVDレンタル 中)
エレン・ページ「JUNO/ジュノ」
ローラ・リニー「ザ・サヴェッジズ(原題)」(未定)
※カッコ内は日本公開日・時期




