TOPニュース / ビジネス / デジタル / ピックアップ > 18歳以下に携帯サイト閲覧制限の波紋

18歳以下に携帯サイト閲覧制限の波紋

携帯サイト閲覧制限 2月1日から、NTTドコモとauは新規契約の未成年者に対し、携帯電話コンテンツのフィルタリング(閲覧制限)サービスを原則実施する。ソフトバンクモバイルはすでに実施済みで、フィルタリングされた携帯電話では基本的に、携帯電話会社が許可したサイトしか見られなくなる。親の同意があればフィルタリングは外せるが、同意する親は少ないとみられ、若者向け携帯サイトの運営各社からは「死活問題だ」との声も上がっている。フィルタリングサービス導入の経緯と問題点を整理してみた。

■総務相が直々に要請
 携帯電話事業を管轄する増田寛也総務相は昨年12月10日、各携帯電話会社(キャリア)の社長を招いた懇談会で、未成年者に対するフィルタリングサービスの原則実施を要請した。

 総務省は2年ほど前から各キャリアに要請を行っていた。だが、導入は伸びない一方で携帯サイトを舞台にした未成年者がらみの事件が続発。そこで大臣が直々に各キャリアのトップに“指導”したというわけだ。

 これを受け、ドコモとauは公式サイト以外は閲覧できない「ホワイトリスト方式」、ソフトバンクは禁止カテゴリーのサイトの閲覧を制限する「ブラックリスト方式」のフィルタリングを導入(auは3月6日からブラックリスト方式を採用予定)。既存の未成年契約者に対しても、請求書と一緒に案内書を送って告知し、今春から順次設定していく方針だ。

■携帯サイトに激震
 ドコモとauの方式では、公式メニュー以外のサイト―いわゆる勝手サイトに未成年者は接続できなくなる。ソフトバンクの方式でも、SNSなどのコミュニティーサイトにはアクセスできない。未成年者に人気の各携帯サイトはコミュニティー機能を売りにしており、その客足を止められることはまさに「死活問題」だ。

 1月21日に慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC機構)が業界関係者を集めて開催したシンポジウムでも、出席者から反論が続出した。なかでも、18歳以下のユーザーが全体の29%も占める携帯サイト「モバゲータウン」を運営するDeNAの南場智子社長は、原則実施の方針が伝えられて以降株価が急落し、「1週間で1500億円の時価総額が失われた」と被害を訴えた。

■「一律制限」の是非は?
 モバゲーは無料で携帯ゲームを楽しめるサイトだが、日記や掲示板、メッセージやチャットなどのコミュニティー機能が人気で、高校生などを中心に865万人以上の会員を集めている。

 メールアドレスの交換などは禁じており、南場社長も「コミュニティーサイトだからといって、出会い系や自殺系サイトなどと一律に規制されるのは屈辱だ」と主張している。だが、モバゲーがらみの事件も皆無ではない。昨年11月には、モバゲーで知り合った30歳の男に16歳の女子高生が殺されるという事件も起きた。

 「しかし、だからといって未成年者向けのコミュニティーを根こそぎ制限してもいいのか?」という声もある。携帯サイトを運営するベンチャー企業の社長は「いじめや受験など、昔とは比較できないストレスがかかるなか、携帯のコミュニティーのおかげで精神の安定を保っている中高生も多い」と指摘する。

 一律制限は携帯ビジネスにも冷水を浴びせた。各キャリアはグーグルやヤフーなどの大手検索サービスと提携し、公式以外の一般サイトも検索しやすい環境作りを進めているが、最大のアクティブユーザーである未成年者が一般サイトに接続できないとなると、携帯ビジネスを手がける企業の目算は大きく狂う。

 これに対し、各キャリアにフィルタリング用のリストを提供しているネットスター社は「一律で制限する理由は、どこかで線引きすると混乱がさらに増すと考えたため。これを機に幅広い議論が展開されることを望んでいる」と話している。

■業界の対応は後手
 「線引きができない」のは、各携帯サイトの内容を判定する明確な基準がないからだ。携帯サイトの業界団体「モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)」は、総務相の“指導”の翌日、健全な携帯サイトを認定する第三者機関設立のための準備委員会をあわてて発足させたが、泥縄とはまさにこのこと。ある業界関係者は「総務省は2年も前から要請していたのだから、いずれこの時が来るのは予想できたはず。MCFの対応は遅すぎる」と批判する。

 ただ、MCFにとって総務相の要請が“寝耳に水”だったのはたしかなようだ。MCFの岸原孝昌事務局長は「われわれが総務省に要請したフィルタリング研究会の第1回会合は昨年11月末に開かれたばかり。その直後に突然、総務省から『導入を決定』と言われた」と不満をあらわにする。

 これについて、DMC機構の菊池尚人准教授は「(背景に)ねじれ国会の影響が少なからずある。この件が票になると考える議員も多く、最近の国会は自民と民主で問題提起の応酬になっていた」と解説する。そこで、この問題を政争の具にしたくない総務省が実施を急いだというのだ。

■「教育」の問題に
 キャリアや携帯サイト、そして永田町や霞が関の思惑までもが複雑にからむフィルタリング問題だが、議論の輪からすっぽりと抜け落ちているものがある。利用者である子供と親の存在だ。

 岸原MCF事務局長は「閲覧を制限すれば、お子さんに『私のことを信じていないの』などと言われ、親子げんかになることも考えられる」と語る。実際、モバゲーにも利用者からの問い合わせが相次いでいるという。

 子供向けの携帯電話使い方講座を支援しているNPO法人「カンバス」の石戸奈々子さんは「本来は(一律禁止でなく)教育で解決すべき問題。だが、いまは家庭も学校も目の前の問題に忙しく、余裕がない。だから、『よく分からないものにはフタ(フィルタリング)をしたい』という心境のようだ」と話す。しかし、最終的には家庭をも巻き込んだ大問題に発展する可能性は高い。
----------------------------
■サービス運営側南場社長
「コミュニティー機能があるという理由だけで、モバゲーは自殺サイトやアダルトサイト、出会い系サイトと同列に有害と扱われてしまった。これは、毎月数億円をかけてトラブルを未然に防ぎ、ユーザー保護の努力を続けているサービス運営者として屈辱だ。まじめにやっているサイトと、そうでないサイトは区別するべきだ。

 モバゲーは出会いを一切禁止しているが、もちろん事故は皆無とは言えない。多感な10代のユーザーが多いので、いくつかの事故も報告されている。それゆえ、私たちはサイトの健全化に力を入れている。

 私は若年層に幅広く愛用されている有意義なサービスを絶対に消滅させたくない。そのため、私たち事業者も襟を正し、健全化に不断の努力を続けていく。そうした努力が報われる枠組み作りを強く希望している。」
(DeNAの南場社長=写真右)
----------------------------
■「一括」の問題はユーザーが選択できないこと
携帯サイト閲覧制限「携帯向けフィルタリングサービスの問題点は、パソコン向けと違い、フィルタリングの中身をユーザーが設定できない点だ。ただ、何が良くて何が悪いのかを判別するのは難しく、今回のような(一括での閲覧制限)方式をキャリアも取らざるを得なかったのだろう。
 どのコンテンツを見たいか、あるいは見せたいかは本来、国やキャリアが決めるのではなく消費者が決めるべきだ。私たちがパソコン向けに提供しているのはカテゴリーのリンク集であり、その中から何を選ぶかは消費者に決めていただいている。フィルタリングはあくまで「選択するサービス」であり、「関所」ではないことを理解してほしい。」
( パソコン向けのフィルタリングソフトを提供するデジタルアーツ・道具登志夫社長=写真左)

「犯罪の防止を一義的に考える警察が右端、表現の自由が大切だと考える携帯サイト提供者が左端にいると考えると、検閲を避けたいキャリアはやや左、子供の安全を第一に考える親と学校はやや右にいるというポジショニングになると思う。

 重要なのは、行政官庁である総務省と経産省が、その間のバランスをいかに取るかということだろう。」
(菊池尚人慶應義塾大学DMC機構准教授=同右)
----------------------------
■専門家は―"抜け道"多く、規制は無意味
 規制が実施されても、いまは子供たちのほうが携帯を使い慣れているので、自分たちで抜け道を見つけたり作ってしまう可能性が高い。また、これまで以上に裏で暗躍するサイトが増えるかもしれない。そのため、業界関係者の大半は規制する意味がないだろうとみている。

 ホワイトリストを作るための第三者機関が組織されたことは画期的だが、抜け道はいろいろとあるので、むしろ正しい利用のための教育を徹底させることが重要だ。そのためには、親たちがもっとケータイの世界を知るべきだと思う。
(携帯電話研究家・木暮祐一氏)
----------------------------
■各キャリアは?
●NTTドコモ
 今回の措置は、子供が巻き込まれる事件が起きていることを重く受け止めた結果。コンテンツ提供者にご迷惑をかけるかもしれないが、事件の発生を防ぐには、現状ではこの方法しか考えられなかった。

●au(KDDI)
 いままでも同様のサービスを提供しており、今回の措置はそれを強化しただけ。弊害は承知しているが、事件を起こさないためには、いまは一律規制しかない。

●ソフトバンクモバイル
 フィルタリングは、会社としての社会的責任を果たすために重要なことだと考えている。コンテンツ提供者の問題は承知しており、今後の検討課題にしたい。

投稿日: 2008年02月09日

トラックバックURL:

ちょいワルフジBLOG

最新記事

夕刊フジBLOGから

コラボ企画

オススメサイト

夕刊フジBLOGモバイル

  • http://yfuji.jp/
    夕刊フジBLOGモバイル
  • 携帯も夕刊フジBLOGモバイル