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瀬名秀明「イヴのみる夢」(20)-脳を活性化するサービス

イヴのみる夢 20年後、千葉県柏市では調剤薬局や郵便局に喫茶コーナーが設けられ、人々が午後の会話を楽しんでいる。公共的な施設にはバーチャルリアリティー装置があって、そこに自分の想い出の景色や品々を映し出せるのだ。

 それを仲間といっしょに見ながら語り合う集会が、特に高齢者の間で人気がある。待ち時間に飲めるハーブティーは疲れを癒やしてくれるし、会話のときに脳の血流まで測定できるので、どのくらい脳が活性化されたかもわかって励みになる。75歳の主婦Hさんは、お茶飲みの会がきっかけで大学の客員研究員に就任した。仲間の脳年齢を若く保つよう会話を引き出す研究に市民として参加しているのだ。

 この未来図は荒唐無稽(むけい)ではない。薬局をリフレッシュ空間として再構築しようとする動きはいま日本でも進んでいるし、新しい脳研究の試みも始まっている。昨年7月、東京大学が柏市と民産官学連携の研究拠点「ほのぼの研究所」を設立して、市民参加型の認知症予防サービスに乗り出した。

 所長である大武美保子准教授がいま関心を持つのは「ふれあい共想法」だ。自分の好きな場所や興味のあるものの写真を持ち寄って、それをスクリーンに映しながら話し合うと、単に話すより考えや思いが共有できて交流も深まり、脳の働きも深まるとの仮説のもと、市民とともに本格的な実証研究に取り組む。

 「いままで科学研究は社会と切り離された上で実施されていました。しかしこれからは市民といっしょに楽しみと生きがいを研究し、提供するしくみをつくりたいのです」と大武准教授は考えている。彼女はロボット研究社会の中で女性のネットワークを組織したり、ロボットと脳科学の統合を図ったりと、異分野が交流する「場づくり」に熱心だ。

 将来はあちこちで記憶を鮮やかに投影する装置が活躍し、私たちはそれらを自由に使って会話を楽しめるようになるだろう。歩いていると市民の好きなものがたくさん見える、そんな町づくりは楽しそうだ。
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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」 「ハル」など。

■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」


投稿日: 2008年02月13日

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