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瀬名秀明「イヴのみる夢」(21)-家禽の遺伝子改変で抑制も
人は社会を混乱から守るために、どこまで自然界の摂理に介入してよいのだろうか? インフルエンザ大流行を防ぐべく、近い将来に科学者たちはこんな闘いを始めるかもしれない。ニワトリなどに遺伝子改変を施し、家禽(かきん)から人への感染を最小限に食い止めようとする試みである。
現在、世界45カ国以上に拡散したH5N1と呼ばれる高病原性トリインフルエンザA型ウイルスは、もともとトリの間で流行している。トリの細胞には2―3と呼ばれる部位が突き出ていて、ここにウイルスが結合して感染する。
一方、人間の気道や肺には2―6という別の部位も突き出ていて、トリのウイルスが変異を起こしてこの2―6に結合できるようになると、トリから人への感染が起こるだけでなく、今度は人から人への感染も可能になり、ウイルス大流行が起こってしまう。1918年に世界で4000万人の命を奪ったスペインインフルエンザも、2―6に結合できるウイルスに変異していたことが、東京大学・河岡義裕や中部大学・鈴木康夫(筆者の父親である)の研究でわかっている。
ではなぜトリのウイルスは2―6にも結合できるようになるのか? もちろんトリから人に感染して、人の体の中で変異する可能性もある。しかし筆者の父は最近、ニワトリやウズラの細胞にも2―6型の突起物があることを見いだした。つまりウイルスはもともと家禽の体の中で変異を起こして、それから人に伝搬する可能性もあることが、今回初めてわかったのだ。
いまもタイでH5N1型のトリインフルエンザウイルスが再発し、養鶏場のニワトリ6万羽が処分されている。人間もウイルスも自然界の一員である以上、感染を阻止することはできない。しかしウイルスの変異を最小限に食い止める対策は可能かもしれない。家禽の2―6部位を遺伝子改変で減らし、ウイルスが2―6結合型へ変異する確率を抑える……これは空想の技術だが、自然界の倫理と天秤にかけつつ、科学者たちの闘いは今後も続いてゆくことだろう。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
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(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
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(1)「ミトコンドリア占い」



