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「中国ニセ食品のカラクリ」著者の富坂聰さんに聞く
“殺人ギョーザ”事件で改めて注目を集める中国の「食の安全」。豊富な経験と人脈を生かし、中国社会の表裏を描き続けてきた第一線のジャーナリスト、富坂聰さんの「中国ニセ食品のカラクリ」は、薬品まみれの食品やニセ食品が生み出される生産現場の実態をつづった 渾身(こんしん)の一冊だ。五輪を目前に急激な発展を続ける中国ではいったい何が起きているのか。
――食の問題を描こうとしたきっかけは
「2006年秋のエチゼンクラゲの大量発生の原因を追って中国の環境問題を描こうとしたところ、思い付いたのが身近な食事情でした。中国に暮らすと、当たり前のことでも日本では意外に知られていない。半年間ウオッチしたら、出るわ、出るわ。2つの驚きがありました」
――驚きとは
「1つは、いくら当局が厳しく取り締まってもそれをかいくぐってチャンスをつかもうという人はなくならない。ニセ卵作りなど、ほんの1円、2円のために頭と体を使う情熱に感服しました。社会の貧困の格差がなくならない限り、中国は変わらないなと」
――もう1つは
「地元メディアが平気で行政批判をしていることです。当局幹部が『メディアが報じてきたことは99・9%正しい』と言及するなど、行政が意図的にそうさせている面もあるのでしょうが、メディアは自ら読者に向き始めているのでしょう。面白いものを書くという流れは今後、止められないでしょう」
――現場の声を豊富に取り上げられていますが
「情報は上流(現場)に行けばいくほど価値が高まるので、現地の声を聞くというのを基本にしてきましたが、食の報道は地元メディアによるところが大きかった。取材のたびに地元紙を読むのが楽しみなぐらい。中国人は本来、珍しいことが大好きな人で、こういう人たちが本当に解放されるとすごいだろうと実感しました」
――最も衝撃的だったのは
「日本ではあまり反応がありませんでしたが、ホルモン剤を多用した食品のせいで、乳房が14歳のレベルまで膨らんでしまった5歳の女児やヒゲが生えてしまった男児ら子供の異変を指摘した医師らの証言。人間が壊れていくんじゃないかと非常に衝撃的でした」
――「ルールを守ると生きていけない」との表現がありますが
「例えば高級薬草の『冬虫夏草』を鉛の粉を混ぜて高く売る生産者がいれば、はかりを不正改造して安く買いたたこうとする買い手がいる。何かしないと本当に損する国なんだと思いますが、発想の豊かさには感心させられました」
――解決策は
「食品問題に劇的に改善する特効薬はありません。かつて日本は防波堤を高くしていましたが、安いモノを求めてどんどん奥地へ入っていきました。冷凍ギョーザの事件で分かるように、中国と同じ水位にあり、ジョボジョボと(製品が)入ってくる状態。付き合っていかざるを得ないんです」
――日本人はどうすべきか
「安さには理由があるということに気を付けないと。日本人は安さだけでいいモノを 淘汰(とうた)してきてしまった。中国に依存して原材料にも接触せず、モノを見る目を失っている。再び堤防を高くしても例外は入ってきてしまう。それより売れなければ、彼らも作らないわけで、本物を見る基準を養うことが、日本の食を見張る意味でもいちばん必要ではないでしょうか」
(角川学芸出版・1500円)
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内容
“殺人ギョーザ”事件で、クローズアップされた中国の「食の安全」を過熱する地元メディアの報道を手がかりにニセ卵やニセ粉ミルク、薬品まみれの魚介類など、具体例に迫りながら、生産現場で繰り広げられるモラルハザードの実態を描く。
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とみさか・さとし
1964年、愛知県生まれ。北京大学留学後、豊富な人脈を生かした中国のインサイドリポートを続ける。「龍の伝人たち」」(小学館)で21世紀国際ノンフィクション大賞を受賞したほか、著書に「潜入 在日中国人の犯罪」」(文芸春秋)がある。


