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瀬名秀明「イヴのみる夢」(22)-細胞をプリンターで印刷
あなたが台の上に立つと、特殊な光線が足から上へとあなたの全身をスキャンしてゆく。ホログラフに映し出されてゆくのは無数に測定されたあなたの輪切り映像で、それを重層してゆくとたちまちあなたの全身となる。
「ではプリントアウトしてみましょう」
未来の医者はそこから腎臓の3次元データを取り出して、ふしぎなインクジェットプリンターの前まで連れて行く。動き出したその機械は、なんと紙に絵を描く代わりに細胞をものすごい速さで噴出して、溶液の中にあなたの腎臓をたちまち印刷してゆくのだ。医者は頷(うなず)いていう。
「細胞同士がうまくくっついたら、すぐに移植できますよ。2週間後に来てください」
こんな技術をまじめにセイコーエプソン社と開発しているのが、東京医科歯科大学/神奈川科学技術アカデミーの中村真人准教授だ。
いま再生医療の技術開発は世界的にも盛んで、骨を再生させる足場を3次元的に設計するCADシステムや、それを印刷するバイオプリンティングの技術は実際に検討されている。しかし中村准教授はインクジェットプリンターが1ピコ㍑の液滴を制御することに注目し、これなら細胞ひとつひとつを噴射して臓器を描いてしまおうと発想したのだ。
細胞を特殊なゲルとともに噴射すると、液体の中で細胞をシート状に敷き詰めることができる。重ね書きをすれば盛り上がるから、とぐろを巻かせて細胞入りの3Dゲルチューブをつくることも可能。次はこの細胞を組織としてきちんと生育させ、バイオ人工臓器に使えるようにするのが課題だろう。
精密に体内の組織のかたちを読み取る機械と、それを印刷する技術がセットになれば、究極の人体コピー機ができあがる。レディーメードではないので、臓器はあなたのいまの身体にぴったりフィットするはずだ。
となれば、将来は年賀状も細胞のインクジェット印刷に? 恋人からの手紙には唇が印刷されているのかもしれない。
■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」




