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東芝はピンチをチャンスに
東芝がHD DVD開発から撤退し、各界に波紋が広がっている。
HD DVDの劣勢は昨年後半から顕著になっていた。東芝が潔く「負け」を認め、早い時点で事態の収束を決断したことは素直に評価したい。
今後注目したいのは、すでにHD DVDを購入したユーザーへの対応だ。HD DVDは既存のDVDにハイビジョン映像を録画できるなどの利点もある。セルDVDはなくなっても、録画用途などで少なくとも10年は十分使えるスペックを持っている。HD DVD購入者の中には今後も機器を使い続ける人が多くいるだろう。それらの顧客に、東芝がどう対応するのか注視したい。
東芝といえば、1999年に起きた「東芝クレーマー事件」が思い出される。ビデオデッキの修理をめぐり、ユーザーに不適切な対応をした東芝担当者の音声がネット上に“暴露”された事件だ。
実は筆者も、同社のHDDレコーダーが故障して電話相談した際、人を小ばかにしたような担当者の態度に切れそうになったことがある。ちょうど同じころ、松下電器のエアコンも壊れたのだが、20年も前の製品にもかかわらず、同社の担当者は当時の取扱説明書まで引っ張り出して丁寧に対応してくれた。企業の体質の差を実感したものだ。
現在の東芝がかつてのままだとは思わないが、消費者の目はさらに肥え、ネット社会の拡大に伴い「主張するユーザー」も90年代の比ではなく増加している。一方で、多発する企業の不祥事において「誠実に対応する」ことが、かえって企業イメージの向上につながる例も増えている。
筆者は以前、この欄で「デジタル社会にはユーザーフレンドリーが重要」と書いた。デジタル機器は進化が早いので「売り切り」になりがちだが、企業はユーザーとの長い付き合いを目指すほうが結果的にメリットが高い―という主張だ。東芝の撤退は予想よりかなり早かったが、今回のことを逆に「チャンス」ととらえ、既存のHD DVDユーザーへの手厚いサービスを真剣に考えてほしい。

