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『三世相(さんぜそう)』松井今朝子著
副題は「並木拍子郎種取帳」だが、帯には「人気捕物帳シリーズ、待望の第3弾」とある。いまで言えば、種取は新聞記者、捕物は刑事で職種が違う。 かぶき芝居の台本書き、並木五瓶の弟子である拍子郎が、芝居の種になりそうな世間の噂話を集めた帳面が「種取帳」。しかし噂の中には事件につながりそうな物騒な出来事もある。
そこで、拍子郎は町奉行所の同心である兄と組んで、解決に乗り出すこともある。つまりコピーの「捕物帳」もデタラメではない。
全5編の連作集。表題になっている「三世相」とは、前世、現世、来世の因縁を占う唐土(もろこし)(中国)の占術書が日本に渡来、小冊子となって江戸ではやったものらしい。五瓶や拍子郎は全く信じないが、五瓶の妻、小でんや料理屋の娘で拍子郎に想いを寄せている、おあさなどは夢中。拍子郎がおあさからよく当たると評判の占師のところに種取に出かけたのがきっかけで、占いによる殺人事件を解決するという話。
鼓と鹿脅しの音を結びつけた殺人事件のアリバイを解く「雨の鼓」とともに表題作は一番、捕物帳に近い。
しかし、ミステリー仕立てで吉原風俗を克明に描いた著者の直木賞受賞作『吉原手引草』と同じように、『三世相』も拍子郎が出入りする芝居の世界や江戸の人情、風俗の描写が主で、どちらかといえば捕物は薄味の感がある。
薄味といえば、五瓶宅で料理自慢のお朝が作る蛤の身をすりつぶし山芋と練り合わせたお椀種とか、刻んだ蓼(たで)を混ぜ込んだ鯵(あじ)の沖膾(おきなます)、焼きたての鯖と蓮飯(はすめし)などが各話に出てきて、これは生唾が出てくる。(角川春樹事務所・1575円)



