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田口ランディさん-がんでも「死ぬまで生きる」
作家、田口ランディさんが、「がん」にどっぷりと浸かり、5年ぶりに取り組んだ長編小説『キュア』が読み応え十分だ。科学、宗教、スピリチュアルまで取り入れ、「書きたいこと、全部書けた」。父親のがん闘病介護もしながらの執筆。渾身の1冊だろう。
――テーマは重いが、グイグイ引き込まれた
「私もがんのことばかり考えすぎて、自分もがんになっちゃうんじゃないかと怖くなった時期もあった。でも、そこで、自分は何を怖がっているのか知りたくなった」
――きっかけは?
「患者側の人から『小説は、がんをあまりにも装置として使いすぎている』といわれたこと。確かに私も、小説で人を殺したいときはがんにしちゃう。でも患者さんにとって、“がん患者”というのは差別になると聞いて、がんそのものをテーマに小説を書けないかなと」
――手応えは?
「それでも結局がんが装置になっていないか、患者の人はどう思うか、不安。ただ、こんなにいろんなものを詰め込んで構成もメチャクチャだけど、初心に戻るつもりで好きなように書いた。すごく気持ちいい」
――医学、宗教、スピリチュアル、超常現象まで、さまざまな要素が絡み合う
「日本の文学界からは黙殺されるようなテーマだけど(笑)、今この時代、ここに切り込まないで何が語れるのかという感じはある。実際、がんになったらすべてのことが必要になってくる。本では、それぞれが分断されている弊害も書いていて、お互い利用しあって、有機的に結びついたほうがより安全で現実的な医療につながると思う」
――執筆中に、お父さんががんにも?
「本の発売日(1月11日)がお葬式だったの。最後はホスピスで延命治療もせず、大変穏やかな死でしたが、延命しないことが本当によかったのか自信なかった。でも、意識がぼんやりする直前に『どうやらお迎えが来たらしい。これも天命、自分でも納得している。お前たちも末永く幸せに』と遺言を残して、これでよかったんだと父にOKをもらったようで。その後、自然にゆっくりと心臓が止まって…」
――まさに、作品でポイントにもなる「死ぬまで生きる」状態では?
「そうなの! 自分の書いたことは実行できるじゃないって!! 最後までいい人ってわけじゃなくて、父もホスピスから脱走したり、死ぬのは嫌だと騒いだり、すったもんだしながら、その都度懸命に生きた。人間やることをやらないと、けじめはつけられないなと思いますね」
――執筆を通じて改めて思うことは?
「私たちが作り上げてきたがんという病気のイメージによって差別やマイノリティーを生んでいることに気付くべき。そして、死というものをちゃんと考える…私もこれで死が怖くなくなったとは言わないけど、嫌悪はなくなったかな」
――死に向かってどう生きる?
「死ぬまで書くのか、家族との時間を大事にするのか、選択はその都度していくでしょうけど、人生最後の宿題ですね。今からあまり考えると病気になっちゃうね」
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物語
幼いころから身についた不思議な力に導かれ、“神の手”を持つとさえいわれる若き外科医、斐川竜介。だが、自身も肝臓がんに冒され、がんとは、病からの救済とは―を問い、医学にとどまらない究極の治療・キュアを模索する。
(朝日新聞社・1680円)
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たぐち・らんでぃ
1959年東京都生まれ。2000年、『コンセント』でデビュー。01年、『できればムカつかずに生きたい』で婦人公論文芸賞受賞。『ドリームタイム』『オカルト』などの小説、エッセーも。
■「キュア」
