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『猛女とよばれた淑女』齋藤由香著
副題「祖母・齋藤輝子の生き方」。歌人・齋藤茂吉の妻であり、精神科医・齋藤茂太と作家、北杜夫の母である。
この頁の左肩には、夫婦愛物語の特集が組まれている。輝子の孫娘(北杜夫の一人娘)である著者が「茂吉と輝子は四人の子供に恵まれたが夫婦仲は最悪だった」と書いているように、これは反対の物語ともいえる。
大病院の跡継ぎとして使用人にかしずかれ、ワガママいっぱいで育った輝子と、山形から上京して刻苦勉励、婿養子になった茂吉。「外交的な輝子に比べ、茂吉は感情を内面に沈殿させる」が、「あるレベルに達すると猛然と爆発」し、子育てをしない輝子をなじり殴打する。
躁病の父親、北杜夫夫婦の家庭騒乱の一幕も、茂吉夫婦の話と並行して、あけすけに書かれている。昔なら身内の恥をさらすということになるが、さすが作家の血をひいた著者である。
茂吉が寝たきりになってからは、下の世話まで甲斐甲斐しく世話をし家族を驚かせたという半面。「嘘がつけなくて正直で、昔の女学生のような純粋さがある方」(黒柳徹子)
「お呼ばれの席でも『これ、まずいわね』と平然とおっしゃるので茂太と震え上がり…」(茂太夫人)「本当に天真爛漫な方」(銀座「浜作」大女将)といった証言も含めて輝子の人間性を多面的に描き出している。「何とも風雅」と著者が思っている軽井沢の別荘にやってきて「おやまあ、すごいボロ小屋だこと」と言い放った。
89歳で亡くなるまでに世界108カ国、79歳で南極、80歳でエベレストに挑んだという。アフリカに行ったとき、母親の面倒を見るつもりで同行した北さんがへばってしまい、息子がかえって世話をされる羽目になったという話もおかしい。(新潮社・1470円)
