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「サラリーマン小説 再読」国際弁護士ならではの『社外取締役』
商法の抜本改正実現への方向づけがされた2004(平成16)年、国際弁護士が本業の傍ら書いた小説が反響を呼んだ。
主人公の歴史学教授、高屋弘一に東証一部上場の港食品社長から社外取締役就任の要請が来る。経済界に疎い彼はためらうが、月1回2時間、取締役会出席だけで報酬が月44万円と知り、受諾する。教授の月収はボーナスをならして70万円…小遣いも増えるだろう。
初めて取締役会に出席して驚いたのは社長のワンマンぶり。高屋の発言機会はわずか。ただ、昼食は一流料亭の豪華弁当であり、送迎はハイヤーと悪くない。
ところが海外で自社製品の腐敗騒動が起こり、一転、会社は危機に。そこへ副社長が反乱を起こし、取締役会が紛糾。社長は副社長を道連れに辞任し、主人公に身代わりの社長就任を要請する。無色が幸いした。
教授時代に比べ収入は7、8倍に。当初は前社長の操るままに動いた主人公も、考えに食い違いが生じたのを機に自力での経営を始める。だが、社長のいすを狙う常務に教授時代の教え子へのセクハラを告発され、辞任に追い込まれ、妻にも離婚される羽目に。
それでも、顧問弁護士から「取締役は株主総会を経なければ解任されることはない」とアドバイスされ、がまんするうちに状況は好転。出る杭は打たれる。ならば、社外取締役に徹しよう―。
「社外取締役を5社かけ持ちすれば、年収2000万円」など、商法改正で浮上したこのポストの特色がよく描かれている。著者ならではの“企業法律小説”だ。
(文芸コラムニスト・長野祐二)

