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狂気の水中特攻兵器「伏龍」を描いた熊谷達也さんインタビュー

群青に沈め 僕たちの特攻 太平洋戦争中に「伏龍(ふくりゆう)」という水中特攻があったことをご存じだろうか。本土決戦に備え、1人海底に潜み、敵の上陸用舟艇めがけ棒機雷ごと体当たりする狂気の特攻作戦だ。この伏龍隊員に選ばれた若者を描いた戦争青春小説「群青に沈め 僕たちの特攻」で、熊谷達也さんが新境地を開いた。

――デビュー10年。どうして今、戦争小説を
 「僕の親は戦争を体験している最後の世代です。戦争の記憶は薄れていくので、バトンタッチして語り継ぐことが書き手として大事なことだ、と思うようになって」 

――青春ものとして軽快に描いていますが
 「太平洋戦争を扱った著作はたくさんあるが、研究リポートで調べるとか、軍事オタクだとか、特別な人でないとなかなか手にとらない。僕は文芸書として読んでほしかったから、あえて若い人たちにも通じる現代的な感覚で書きました」

――「伏龍」という特攻は知りませんでした
 「棒の先に機雷をくくり付け、海底で50メートル間隔で横に並び、上陸用舟艇が来たら突いて体当たりするものです。本土決戦がなかったので、実際には伏龍特攻は行われなかったが、横須賀での訓練中、粗末な潜水服が原因でかなりの兵士が亡くなったのです」

――竹槍でB29を墜とす発想
 「特攻といえば『神風』、人間魚雷『回天』が有名ですが、僕自身、元伏龍特攻隊員の門奈鷹一郎さんの著書『海軍伏龍特攻隊』を手に取るまでまったく知らなかった。実は特攻兵器はまだ山ほどあるのです」

――主人公は、その伏龍特攻隊員に選ばれ「カッコ悪い」と思う
 「どの時代でも、大人になってもそうですが、カッコよさは何かを選ぶときの普遍的な価値基準。実際、門奈さんも「かっこ悪い」と思ったそうです。飛行機に乗りたいと予科練に入ったのに終戦間際で飛行機はない。棒機雷で体当たりしろ、では当時の若者もガッカリしたでしょうね」

――今後はこうした戦争小説のシリーズ化も
 「マタギなど自然をテーマにした作品、自分のルーツである古代東北地方の蝦夷などの歴史小説、それに続く3つめの柱となるでしょう。いま、仙台空襲の話『X橋の虹』を雑誌に連載していますが、実際には戦場に行かなかったとか、見送る側の話とかあまり描かれてないものも少しずつ書いていきたい」

――熊谷さんのルーツは蝦夷ですか
 「小説を書き始めたころ、鏡を見て『明らかに縄文系の顔をしてる。自分のルーツは』と悩んだことがあった。沖縄に行くと『ウチナンチュ(沖縄人)でしょ』なんて言われる。僕は東北出身ですが、要は北と南の縄文人がいた所に渡来系がやってきて駆逐された歴史があって、俺は負けちゃった方の蝦夷なんだと…」

――単純に顔から?
 「ほとんど顔を見ればわかりますよ。北の蝦夷も南の熊襲もたぶん系統は同じ。その辺のこだわりが作品に出てるのかな。この作品の主人公はやっぱり東北人として描きましたからね」
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くまがい・たつや
 1958年、宮城県生まれ。東京電気大卒業後、中学数学教諭などを経て、97年『ウェンカムイの爪』で作家に。『相剋の森』から『氷結の森』で終わるマタギ3部作の第2作『邂逅の森』で2004年、山本周五郎賞、直木賞をダブル受賞。

「群青に沈め 僕たちの特攻」

投稿日: 2008年03月21日

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