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「サラリーマン小説再読」堺屋太一・著『油断!』先見の作

book20080318_01.jpg マラッカ海峡でタンカー祥和丸が座礁、満載の原油が流失した1975(昭和50)年、石油輸入が不能になった事態を想定した小説が現職の通産省(現経済産業省)課長によって書かれ、話題を集めた。

 通産省エネルギー庁石油第一課の課長補佐の小宮幸治は34歳。深夜まで残業した翌早朝、同僚の電話で叩き起こされる日々。当時、公害問題に追われていたが、彼の頭には公害より大きな問題が近い将来起こるのではという危機感がある。不安定な中東情勢が悪化し、石油輸入に支障が生じたらどうなるか。

 通産省では危機プロジェクトを結成、情報収集を始める。ただ、公式機関でないため予算はつかず、資金を関西の資産家に負う。小宮は婚約者をほったらかしにして時間外勤務もいとわず働く。

 「日本は石油需要の九九・七%までを輸入に頼っている」「日本の石油備蓄は平均消費量の六十五日分くらいしかない」は事実。小宮の不安は的中する。イスラエルとシリア・エジプトが交戦状態に入り、ホルムズ海峡封鎖で、中東から1滴も石油が入らなくなる。油が断たれた状態だ。

 燃料が枯渇、物価高から経済は沈滞、倒産が続出、ついに米騒動に至る崩壊の連鎖が描かれる。代用燃料の不始末から火事が頻発、混乱で婚約者は行方不明に。石油を買い占めていた関西の資産家だけが潤う。

 著者は過去に石油輸入減の研究を省内外の有志としたことがあり、それを小説化したのである。著者のような先見の明が社会保険庁にあればよかったのにと思う。
 (文芸コラムニスト・長野祐二)

「油断!」

投稿日: 2008年03月25日

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