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瀬名秀明「イヴのみる夢」(27)-歩くだけで5ワット! 人体発電機

イヴのみる夢 登山やハイキングが趣味のIさんは、最近重い電池や発電機を持ち歩かない。この日も仲間と山登りに出かけたが、自分の位置を知るGPS装置や携帯電話などの電源が切れても慌てることはない。足の膝に取りつけて小さな装置にコードを差し込めば、たちどころに充電が完了する。この装置は歩行の運動エネルギーを電気に変換してくれるのだ。

 歩くだけで平均5ワット、携帯電話にして10台分を同時に稼働できる画期的な人力発電装置が、カナダのサイモン・フレイザー大学の研究グループによって開発された。人体はエネルギーの宝庫である。ふつうの大人はただ座っているだけでも116ワットのエネルギーを発散するといわれるが、体内の化学エネルギーが運動エネルギーに変換される効率はわずか25%で、多くは無駄に捨てられている。

 これまでも歩行の運動エネルギーを発電に利用する試みはあったが、靴に取りつけられたデバイスの発電量はわずか0・8ワットと、いまひとつ実用的ではなかった。今回の装置は両足の膝の部分に取りつけて、足を振り下ろす際のエネルギーだけを吸収して電気に換える。ちょうど足がブレーキを掛ける瞬間のエネルギーなので、余計な筋力を必要としない。装置の重量は片足1・6キロだが、今後はもっと軽く、シール式や埋め込み式になるかもしれない。

 おそらくは軍隊が最初に実用化するだろうが、過酷な環境で暮らす人々や探検家たちにとっても重要なライフラインになるはずだ。砂漠を行く商人たちが1日の疲れをいやしながら携帯デバイスで地球の裏に住む友人と語り合う、そんな現実は遠からずやってくる。

 そしてこのような装置は、私たちが生きて動いていることを実感させてくれる。健康な人がそのエネルギーを祖父母に分け与える未来社会があってもいい。シルバー世代は代わりに別の知的エネルギー(おばあちゃんの知恵袋)を還元する。携帯料金だけでなくエネルギーを家族で分担するのが、これからの賢い生き方なのだ。

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せな・ひであき
小説家。1968年静岡県生まれ。96年東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了。95年、大学院在籍中に執筆した「パラサイト・イヴ」が日本ホラー小説大賞受賞、155万部のベストセラーに。主な著書は「デカルトの密室」 「ハル」など。


■瀬名秀明「イヴのみる夢」
(26)ミトコンドリア・ダイエット
(25)肥満解消に魔法の弾丸
(24)脳に埋めたチップが支援
(23)遺伝子操作で神経回路オン・オフ
(22)細胞をプリンターで印刷
(21)家禽の遺伝子改変で抑制も
(20)脳を活性化するサービス
(19)日本語は感染症予防に効果的!?
(18)心の痛みに効く処方
(17)“予知”能力もトレーニングできる
(16)「ゆらぎ」を活用する生命
(15)標識付きウイルスで伝播追跡
(14)父親から受け継ぐ「寿命の回数券」
(13)人類のⅠ型糖尿病も同じ!?
(12)「し忘れ」と「し間違い」の脳科学
(11)体外離脱でメンタルヘルスケア
(10)仮想空間で運動障害をリハビリ
(9)「アルツハイマー病予防で残りの人生謳歌」
(8)「ロボットと運動する楽しさ」
(7)「ペットが分身に?」
(6)「オヤジ臭さ」撃退!
(5)「人間の脳と機械の体を"融合"」
(4)「自分の脂肪でケータイ充電」
(3)「自分の一部を機械が操作」
(2)「ゲノム情報を読み取る」
(1)「ミトコンドリア占い」

投稿日: 2008年04月02日

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