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「偉人のカルテ」ピサロ、天然痘で"バイオテロ"

 インカ帝国は13代目の皇帝アタワルパの時代に絶頂期を迎えたが、その直後の1532年に滅亡した。滅亡の60年ほど前、スペインのトルヒーヨという町でフランシスコ・ピサロは生まれた。1502年にアメリカ大陸に渡る。

 やがてインカ帝国という黄金に富む国があることを知り、1529年にスペイン国王カルロス5世から征服を認められる。その3年後、アタワルパを捕らえたピサロは身代金として膨大な金銀を手にしたうえで、アタワルパを処刑し首都クスコに入城する。

 ピサロは185人の兵士と37頭の馬だけでインカ帝国を滅亡させたことになるが、実はピサロには恐ろしい秘密兵器があった。それは「天然痘ウイルス」。天然痘がなかった当時のアメリカ大陸に大流行を起こさせたのである。

 天然痘は天然痘ウイルスによって起きる伝染病で、医学的には「痘瘡」と呼ばれる。感染して10―14日の潜伏期が過ぎると高熱と頭痛や筋肉痛が起き、4日目に全身に小さな痘疹が現れる。7日目くらいから再び高熱が出て、死亡するのはこの時期に集中する。死亡率は50%を超すといわれる。だから人類が最も恐れてきた伝染病だったが、1980年、WHO(世界保健機関)が根絶を宣言した。

 しかし、天然痘は撲滅された今でもバイオテロの手段として恐れられている。そのため、日本の感染症法には、最も恐ろしい感染症を対象とする「1類感染症」の中に入っている。 
 (東京文化短大学長・医学博士・中原英臣)

投稿日: 2008年04月21日

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