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「かねやんぐうたら読書」山下景子著『ほめことば練習帳』

山下景子さん かれこれ10年も前の話になるが、鎌倉で翻訳劇の公演を観に行ったら林真理子氏に出会った。上智大教授の知人が主催している素人劇団だから、林さんも彼と個人的な知り合いで鎌倉まで足を伸ばしたのだろう。

 林さんとは、夕刊フジのエッセー連載をお願いに行ったら、「あなた、前に私の悪口を書いたでしょう」と言われたことがある。彼女のデビュー当時、当時はまだ珍しかったあけすけな語り口にいささか辟易(へきえき)した覚えがあるから、そのことを書いたのだろう。「いやあ、悪口ではなかったでしょう」と、へどもどして以来、何となく苦手だった。

 鎌倉で偶然に会い、挨拶して別れたら、一緒に行った友人が「お前さんは女性作家に愛想がなさすぎる。せめて、綺麗ですね、ぐらい言うもんだ」と言う。

 「そうか」と思い、また林さんのところに行き、「今日はお綺麗ですね」と言ったら、むっとして黙殺された。漱石の『草枕』ではないが、とかくに、ほめ言葉は難しい。

 この本は、いわゆるハウツウ物とは違う。「ほめる」とは、古くは、祝ったり、祝福したりする意味の言葉という故事から、「感動を伝える」「能力に敬意を表する」など6章にわたり、語源にさかのぼってほめ言葉を紹介。「ほめる」ことで自分も幸せになるという、ほめ言葉哲学を語る。

 好奇心の強い人は気づくことも多いので、ほめる材料にこと欠かない、という。なるほど、林さんは彼女の魅力に気づかず、通り一遍の世辞しか言えなかった私を、言葉を扱う作家としても拒否したのだろう。(金田浩一呂)


山下景子著『ほめ言葉練習帳』(幻冬舎新書・798円)

「ほめことば練習帳」

投稿日: 2008年04月29日

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