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フランスに寄生する知識人たち
フランス文学者で昆虫研究家の奥本大三郎さんが、毛色の変わった小説『パリの詐欺師たち』を刊行した。題名からイメージされる派手な小説ではないが、誰かに寄生したり、虚勢をはったりするインテリたちの“詐欺師”ぶりを洒脱に描き面白い。「人間の要素は虫の世界にも全部ある」と語る奥本さんに“詐欺師”の正体を聞いた。
――日本の仏文学界を痛烈に批判していますね
「この小説で昔から腹が立っていたことをぶちまけました。仏文学界にある一つの性質ですが、インテリ全般に通じるものがあります」
――その 衒学(げんがく)ぶり?
「フランスをありがたがって、日本人は知らないと思って、いい気になって適当なことをいう。私も大学でそうやっているわけですから、人のことは言えないですが…」
――なぜいま
「若いときは書けなかった。当時は被害者であることが多かったし(笑)。いまは怖いものがなくなったから。大学ももう定年だし、別に出世することもないし」
――登場人物の詐欺師たちは魅力的ですね
「格好いいでしょう。付き合っていて初めは楽しいの。だってカネ取らないから。人を欺す動機がわからないので、みんなコロッと欺されちゃう」
――仏文学界の反響は
「仏文学界なんて小さいですが、先輩方からは『私もあいつは詐欺師だと思っていた。溜飲が下がった』といった葉書をたくさんもらいました」
――寄生する人は虫にも似ている、とか
「巧妙に寄生するからね。人を欺して、なんとなく潜り込む。寄生性の虫はそれをしないではいられないのです。なぜなら、寄生する余地があるからその場所にはまり込む」
――詐欺師も同じ?
「虫と同じ、もう(持って生まれた)性質ですね。偽札作りと同じです。あれだけ努力するなら、働いた方が早いのに偽札を作るようなもの」
――一番まっとうな虫、いや人は
「まっとうに田畑を耕すのが一番かもしれないが、実は私もよく分からない。耕すヤツの物をピンハネするのもラクですしね」
――愛すべき虫は
「フン転がし。形がよくて、色がきれい。頭の部分にギザギザのヘラがあって、それでざっくりと切り取って、前足のノコギリで氷屋さんのようにシャシャとカットして運んでいく。それが幸せな生活ではないかと思うのです」
――続編が期待されますが
「インテリの生態については書くことはいっぱいありますね。ああ、こういう人いるよ、なんて、酔っぱらって楽しんで読んでくれるものを書きたいですね」
――ところで、ライフワークのファーブル昆虫記は
「いま6巻の上を刊行したところです。全10巻20分冊ですから、まだ先は長い。だから、ファーブル詐欺だけは避けたいと思っています(笑)」
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物語
『パリの詐欺師たち』は、食通で酒飲みの奥山先生という主人公がパリで、ミシュランの覆面調査員という日本人男性に悩まされる話。この2人が、日本の仏文学界に実在する“詐欺師”たちの複合体、モザイク人物だという。ほかに台湾を舞台にした小説『蛙恐怖症』を収録。
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略歴
おくもと・だいざぶろう 1944年、大阪府生まれ。フランス文学者、作家。昆虫を題材とした随筆が人気で、著書は『虫の宇宙誌』『楽しき熱帯』など多数。現在『完訳ファーブル昆虫記』を順次刊行中。埼玉大学教授。ファーブル昆虫館「虫の詩人の館」(東京・文京区)館長。
