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サラリーマン小説再読『粉飾決算』左遷先で意外な事実

粉飾決算 大企業が統合を余儀なくされる時代に、三井物産出身の著者が揺れる大手商社を描いた作品。

 リストラ中の扶桑通商で落ちこぼれを自任する主人公の芦田慎二(49)は専務から、「連結決算の時代にふさわしく関係会社を整理したい」と、法務部から関連企業部への異動を命じられる。

 関連企業部は会社の吹きだまりで、彼は左遷と受けとめる。やがて、彼は関係会社が膨大な不良債権を抱えているのを知り、その一つを回収する役が回ってきた。持ち前の熱意で企業舎弟という経営者とわたり合い、返済なき場合は処置をとると宣告する。

 一度は自社内の足並みがそろわず、孤立、背任のぬれぎぬを着せられるが、正義漢の部下の助けもあり強制執行で債権の回収に成功する。社内出世が眼中にないからできたことだった。

 これで関係会社の粉飾決算の実態が暴かれ、拡大路線派の黒幕だった副社長が失脚する。副社長は専務のライバルで背任の噂の仕掛け人だった。事は一件落着したが、自分が「派閥争いの駒」と悟った彼は辞職する。

 家庭では、妻がそば店を開き、息子は大企業を忌避しアニメーターをめざす。「物をつくっていない人間は、どっかまともでないと思うね」と述懐、自分も人間的でありたいと願う主人公に共感する人は多いかもしれない。(文芸コラムニスト・長野祐二)

「粉飾決算」

投稿日: 2008年04月28日

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