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清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(2)USJ(中)
春休みに引き続き、春の行楽シーズンとあって多くの入場者でにぎわう大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」。2005年3月期以降の入場者を見ると、810万人、831万人、870万人、そして前期08年3月期は890万から900万人あたりまで順調に戻してきたもようである。
よく比較される「東京ディズニー・リゾート(TDR)」が、開業から25年、多少の上下動はあったものの比較的順調に経営が推移してきたのに対し、開業7周年を迎えたばかりのUSJは有為転変、極めて動きが激しかったと言わざるをえない。
実のところ、USJはオープン時から既にいくつかの危惧すべき点が指摘されていた。一つは大阪市の役人が果たして極めて難しいテーマパークを経営できるのかという点であり、もう一つはアローガント(傲慢)なハリウッドの映画人―テーマパーク関係者を含めて―が、日本のマーケットに最終的にフィットするテーマパークへと着地させられるかという点であった。加えてより大きな危惧として、オープン時のコンセプト「パワー・オブ・ハリウッド」が日本では受け入れられづらいのではないかということがあった。
TDRは第2パーク建設に際し、ディズニー側が提案した「スタジオ・ツアーズ」プランを蹴飛ばし、役員間で対立が起きた。日本では映画文化はアメリカと違い、さほどポピュラーなものではない。とすればこれをメーンに据えたパークは成功しがたい。そこでTDRはやめ、対してUSJはユニバーサル(パークス&リゾーツ)社側に押し切られた。
大阪市側も計画段階では、その難しさをユニバーサル社側に指摘、テーマの改変を訴えたようである。USJの生みの親と言われる佐々木伸前会長はかつて「日本人のレジャーは家族中心。それも子供が小さいうちはあくまでも子供中心。そこを外すとテーマパークといえども成功しない。われわれはそれをユニバーサル社側に強く主張した」と語っている。
そこでユニバーサル社側は、集客上欠かせないキャラクター導入という意味も含めてスヌーピー関連施設の導入を決め、大阪市側に一定の譲歩を示したが、そこまでで留まった。大阪市の役人たちもしょせん、自分の金ではないからであろう、それで妥協してしまった。
開業2年にして不祥事が相次いだあと、USJを離れていた佐々木氏がワンポイントで社長に就き、あとを受けてテーマパーク運営の専門家であるグレン・ガンペル現社長が経営を引き継いだ。
ガンペル社長は就任すると間もなく、パークのコンセプトを「ワールドクラスのファミリー・エンターテインメント」へと一変させる。1999年からUSJの社外重役をつとめていたから、日本人のレジャー観や行動様式を知っており、今のままでは浮上できないと考えたのだ。大きな戦略転換である。
マーケティング担当の田中功取締役は、こう語る。
「開業当初はスリルと興奮、つまり機能面を中心にコミュニケーションを図ろうとし、それなりに集客できた。しかし、それでは次々とアトラクションをつくらざるを得ず、採算面で苦しい。そこでターゲットを若者対象から、小さな子供を持つファミリーや女性に絞ることにし、それに合わせたショーやアトラクション、あるいはキャラクターを導入することにした。ガンペル社長になってからのことです」
確かにガンペル社長になってからは、女性にターゲットを絞った屋外ショー「ウィケッド」や子供向けの「ピーターパンのネバーランド」、昨年春導入の新感覚ジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」、そしてこの春からの「ファンタスティック・ワールド」など中小型投資ながら狙いの定まったアトラクションやショーの導入が多い。
同時に年明けの「バレンタイン」から年末の「クリスマス」「カウントダウン」まで、1年中、イベントが繰り広げられるようになった。多くのゲストはUSJを訪ねても、はずれと感じることがなくなった。そこがリピーターの増加、順調な客足回復の要因だと言っていいだろう。
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ガンペル社長は今年60歳。USJ誘致時から、現ユニバーサル・パークス&リゾート社の海外担当副社長としてこのプロジェクトに関わってきた。不祥事続出のあと緊急登板した佐々木前会長のあとをうけ、04年6月社長に就任。
佐々木氏によると、意気に感じて大阪に来てくれたのだとか。もっとも本人は弁護士資格も持つエリート、それなりの成算があって乗り込んできたのであろう。あるとき「その施策は(日産の)ゴーンさんのやったことと同じですね」と質問したところ、「ゴーンさんに似ているのではなく、アメリカではごく一般的な手法だ」という答えが返ってきた。アメリカ人らしく人なつっこいが、向こう意気も強い。子供が遅くできたせいか、家族思いとの評も。
■清丸惠三郎「企業戦略ウォーズ」新しい出発(1)USJ(上)


