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パクって「売ったもん勝ち」中国ニセゲー事情
“ニセモノ大国”中国から、任天堂の人気ゲーム機「Wii」そっくりのニセモノが日本に上陸し、話題になっている。中国在住の専門家に聞くと、ゲーム機本体だけでなく、ゲームソフトやパソコン、携帯音楽プレーヤーなどにも海賊版やニセモノ機がずらり。中国のデジタル業界では「売ったもん勝ち」のトンデモない常識がまかり通っているのだという。
◇“ニセWii”を体験
任天堂の体感型ゲーム機「Wii」のニセモノ、その名も「Vii威力棒」がついに日本で発売された―との一報が入ったのは某日夕。あわてて秋葉原のパソコン部品店に連絡し、なんとか最後の1台を手に入れた。すでにネットなどで話題になっており、購入客が殺到したようだ。
製品の価格は7980円。Wiiの約3分の1だ。箱を持つと…うん!? いやに軽い。
製造は香港のメーカー、RUMDES社。ViiはWiiそっくりの縦型だが、日本で発売された製品は横型だ。「デザインが(Wiiに)似ていたんで変えたようです」(輸入代理店)。形を変えればOKと考えるあたりが、いかにも安直。いや、形だけではない。名前も「V―Sports」に変わっていた。さらに箱には「名称やロゴは各会社の商標になります」と意味不明な商標権の主張が記されていた。
テレビに接続し、さっそく電源を入れてみた。タイトル画面にタヌキとキツネの落書きみたいなキャラが現れ、初っぱなから脱力感が漂う。
本体には11種のゲームが内蔵されている。試しに、本紙の女性記者が挑戦してみた。まずは中国のお家芸、卓球。Wiiと同様、コントローラーを振って球を打ち返すのだが、手元のコントローラーからはカコンと軽快な音が鳴ったり、ブルっと震えるなど、それなりに芸は細かい。ただ、球が来たら振るだけでOK。ラケットの移動は自動で行われる。あまりの簡単さに「私、うまいかも!」とはしゃいでいた記者も1ゲームで飽き、コントローラーを手放した。
次はダンス。えたいの知れない電子音楽が流れるなか、画面下に流れる球が線を通過するタイミングに合わせてコントローラーを振り下ろす。画面中央では、くだんのタヌキが踊る…というより、なんだか気味悪く身もだえしている。曲に合わせて必死にコントローラーを上下させたが、どうやら振る強弱はまったく関係ないようだ。よく聴くと、曲と球の流れも全然合ってないじゃないか!
気を取り直して野球に挑戦。卓球同様に球が来たらコントローラーを振るだけ。投球のときも振るだけ。ただ、左右の振りの違いぐらいは感知しているようで、ボタンを押しながら投げると、画面いっぱいに左右にカーブする超魔球が投げられた。参りました。
外付けのソフトも付いており、テトリスもどきなど10種類のゲームが遊べるが、こちらは十字キーでコントロールする旧来のゲームだった。
社内で遊んでいると、同僚らが興味津々に集まってきたが、30分もしないうちに飽き、ゲーム機の周りには誰もいなくなった。
この”ニセWii”について、任天堂は「いまのところ、当社として何らかの対応を取ることは考えていない。だからといって問題ないと認識しているわけではない」としている。
◇中国ニセ・デジタル事情
「いかに人気の商品をサッとパクってたくさん売るか、が勝負。その点でViiは中国のもの作りの象徴です」。Viiをいち早く日本に紹介した中国在住のITライター、山谷剛史氏(31)=顔写真=はこう語る。
「似ているけれど、本物よりはるかにショボい。アフターサポートもなく、『売ったもん勝ち』。問題になると、社名を変えて逃げる」
山谷氏がニセモノの代表格に挙げるのはゲームソフト。中国で流通する8割以上は海賊版といい、ソフトが入ったCDが1枚5元(約70円)の安値で売られている。特にサッカーゲームが人気で、コナミの「ウイニングイレブン」の海賊版はそうとう出回っているという。
しかし、V―Sportsにサッカーは入っていない。「本物のWiiスポーツにサッカーが入ってないから、どうやって作るか分からないのでしょう」と山谷氏は苦笑する。
携帯音楽プレーヤーも人気だ。「日本のように、おしゃれだとか実用的だから人気というわけではなく、著作権無視の音楽をタダでダウンロードできるというお得感から飛ぶように売れている」と山谷氏は言う。中国でも、金持ちは本物のiPodを買うが、それが買えない人をターゲットにニセiPodが出回る。「ニセモノが出回るのは、いわば人気のバロメーターなんです」
パソコンも事情は同じ。ネットユーザーが2億人を超え、世界一のネット大国になった中国だが、ソニーなどのブランドPCを所有しているのは北京や上海の富裕層。それ以外の人たちは、中身を安価なものに入れ替えたニセモノを使っている。パソコンを自分で改造するための雑誌やサイトも多く、ニセモノ市場を後押ししている。
ニセモノ市場を読み解くキーワードは「お得感」だ。ゲーム機を買えば海賊版ソフトが付いてくるのは当たり前。ファミコンやゲームボーイのソフトなどを詰め込んだiPod似の携帯音楽プレーヤーも平気で売られているという。
ただ、貧しいからニセモノが横行しているわけでもなさそうだ。山谷氏は「『本物を買う金がないから』と言い訳するが、一度に何十本ものソフトを平気で買っており、ただの建前」と憂慮する。
山谷氏によると、パソコンユーザーのほとんどが文化大革命を経験していない35歳以下。この世代は海賊版の音楽テープを聴き、100タイトルのゲームを1つのカセットに詰めたニセ・ファミコンで遊んで育ったという。「海賊版が当たり前の環境に育った世代が市場を作っているうえ、開発者でもある。正義の名の下にすぐに変えられるわけはない」
では、日本はどう対処すればいいのか。「まずは企業が一丸となって提訴すべき。少なくともニュースになり、中国で著作権が議論され始める。ニセモノが無数にあるからとあきらめるべきではない」




